No.469 ニール・ヤング/パウダーフィンガー (1979)

Rust Never Sleeps
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その469
Neil Young  Powderfinger

「ライク・ア・ハリケーン」「ダウン・バイ・ザ・リバー」「カウガール・イン・ザ・サンド」などの有名曲もまだ残っているニール・ヤングだけど、そこまで有名でもないこの曲を最後に選んだのは、ただもうわたしにとって、この曲がニールの中で一番好きだからに他ならない。

CCRのようにシンプル・イズ・ベストな歌メロも感動的だし、歌のあいだに2回はさまれるギターソロも好きだ。
豪快だが一見たどたどしくも聴こえる彼のギターソロだが、歌うようなメロディが聴こえてきたり、喜怒哀楽がそのまま音になってのたうってるような、唯一無比のギタリストでもある。指の早さを誇示するだけの世界びっくり人間みたいなギタリストとは真逆の、熱い情熱が迸るような真のロック・ギタリストだとわたしは思っている。

「オールド・ブラック」と呼ばれてニールのトレードマークともなっている1953年型ギブソン・レスポールは、バッファロー・スプリングフィールドのプロデューサーもしていたジム・メッシーナから1969年に50ドルで買ったそうだ。
元はゴールドだったものを前の所有者が黒に塗り直し、改造も施された状態で譲り受けた。
ピックアップが不調だったので、外してギターショップに修理に出したが、受け取りに行ったところ店が無くなっていたためピックアップを失い、応急処置でその後はグレッチのピックアップを取り付け、その後またファイアーバードのものに付け替えたそうだ。
とにかく1969年からおよそ50年間、今もまだ使い続けている。

「パウダーフィンガー」のギターソロはライヴで演奏するたびに毎回まったく違ったメロディ、フレーズを弾いてくれるのが楽しみでもある。
CDとして残されているのは79年の『ラスト・ネヴァー・スリープス』、同年の『ライヴ・ラスト』、91年の『ウェルド』と、すべてライヴ録音だったが、今年になって76年録音のオリジナル・アコースティック・バージョンが蔵出しされている。
わたしがいちばん好きなバージョンは91年の『ウェルド』だ。

でもわたしがいちばん忘れられないのは、2001年来日時のフジ・ロック・フェスティヴァルのバージョンである。
わたしはそこにいた。
わたしがニールのライヴを観たのはその一度きりだ。

ライヴの終盤、「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ」で盛り上がり、続いて20分以上にも及んだ「ライク・ア・ハリケーン」を最後に通常セットが終わると、アンコールは「ロッキン・イン・ザ・フリーワールド」だった。
それも終わると、ニールがクレイジー・ホースのメンバーを呼び寄せてなにやら言い、少しの間をおいて始まったのが「パウダーフィンガー」だった。

「オールド・ブラックの調子もいいけん、パウダーフィンガーでもやるべ」なんてクレイジー・ホースのメンバーに指示したのだろうか。わたしの一生に一度の大テレパシーが通じた瞬間だった。
ちょっと恥ずかしかったが、35歳のわたしはパウダーフィンガーを涙目で聴いた。

公演は3時間近くに及び、終演は午前0時を過ぎていた。

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