名盤100選 86 クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング『デジャ・ヴ』(1970)

デジャ・ヴ

言わずと知れた、アメリカのロック史に燦然と輝くスーパー・グループである。
と言っても「言わずと知れた」なんて思ってるのは「団塊の世代」たちぐらいなもので、わたしより下の世代なんかは知らないだろうし、とくに興味をよせたりもしないだろう。

スーパー・グループと呼ばれた所以は、メンバーがそれぞれ元有名バンドに所属していたからで、有名バンドと言っても、バッファロー・スプリングフィールド、ザ・バーズ、ホリーズと、これも今となってはほとんど誰も知らないバンドばかりなので、有名バンドとももはや言えぬし、だからスーパー・グループとも言えなくなってしまうわけだが、いやいやきみたちが知ってるかどうかなんてことはまったくどうでもいいことなわけで、そんなことを度外視してやはりこのグループはスーパーグループなのである。

心の赴くままにフォーク・ソングを歌ったり、勢いのままにロックミュージックを歌ってきた60年代を経て、今度は心の赴くままや勢いではなくて、熟練アーティストとしての緻密な作業で創造した集大成的な「音楽」である。実際ロックとかポップスとか呼ぶにはちょっと格調高すぎる感じがするほどだ。

ファースト・アルバムは、クロスビー、スティルス&ナッシュという3人のグループだった。
わたしはこのベースの音がゴリゴリと大きすぎるファーストも好きなのだけど、ニール・ヤングが加わったこのセカンド・アルバムはよりロック的な要素が大きくなり、曲調もバラエティに富み、サウンドの斬新さ、アルバムの完成度の高さでも類を見ないほどだ。
ちなみにここに収められている名曲「ウッドストック」は前回取り上げたジョニ・ミッチェルが書いた曲である。

このアルバムのアコースティックを主体とした、それでいてフォークというよりは明らかにロックであるサウンドは、さぞかし当時のロックファンに新鮮に響いたに違いないと想像できる。70年代の幕開けにふさわしい響きだったに違いない。
このグループは米国でもわが日本でも、若者たちの支持を一身に集め、爆発的に売れたのだ。

この後、70年代に続々と登場するアーティストの多くがこのグループの影響を受けている。
日本ではちょうどフォークブームの真っ最中であり、当時の日本のアーティストももれなく影響を受けているように感じられる。J-POPの歴史においても、もしかするとビートルズに次いで影響の大きかったグループかもしれない。

このアルバムはまたジャケがカッコいいですね。
なんだか当時のアメリカンニューシネマ、『俺たちに明日はない』や『明日に向かって撃て!』みたいな雰囲気のある写真だ。
よくもまあこんな完成度の高いジャケットができたものである。

Crosby, Stills, Nash & Young’s Fabulous 5 Songs

1.D?j? vu (1970)
2.Helpless (1970)
3.Woodstock (1970)
4.Suite: Judy Blue Eyes (1969)
5.Ohio (1970)