名盤100選 18 ジョニー・サンダース&ハートブレイカーズ『L.A.M.F.』(1977)


ジョニー・サンダースは、21歳でニューヨーク・ドールズのギタリストとしてデビューして、38歳でドラッグのオーバードーズで死んだ。

冷たいかもしれないが、38歳なんてもういい大人じゃないか。
バカな生き方をしたものだ。

しかしこのアルバムは素晴らしい。
70年代のパンク・アルバムには名盤が多いが、イギリスではピストルズの『勝手にしやがれ』、アメリカではこの『L.A.M.F.』が最高峰だと思う。
どちらも奇蹟のように素晴らしい。

プロデュース・ワークの手腕に助けられたピストルズに比べて、『L.A.M.F.』は逆にそこが足りなかった。
まともなプロデュース、いやまともなミックスさえされて、まともなレコード会社から出されていたらこのアルバムは『勝手にしやがれ』や『白い暴動』と同じぐらいの評価を今でもされているに違いない。

短命に終わったニューヨーク・ドールズから始まり、ほんとにこのジョニー・サンダースという男はなににつけても「残念」という結果がついてまわる男である。

素晴らしいギター・プレイのセンスを持ち、パンク・ロッカーの中でもトップクラスの才能を持つソングライターであり、これほどの名盤を生みながらも、メジャーになって成功することよりも、刹那的に生きる道を自ら選んでしまったとしか思えない。

でも、死のその日まで仕事が続けられ、今もまだ「伝説として」名が残っているというところに、ダメな星の下に生まれた男に対するロックという世界の優しさを感じる。

わたしはドラッグに溺れた破滅的なミュージシャンなんかをほんのちょこっともカッコいいなんて思わないし、心からアホだと思っている。

それでもわたしにとってジョニー・サンダースは、最も愛したロックンローラーのひとりであることは永久に変わらなさそうだ。