名盤100選 53 ブロンディ『ザ・ベスト・オブ・ブロンディ』(1981)

つい忘れそうになるが、ブロンディを忘れてはいけない。

わたしにも少年時代があったが、土曜のお昼はFMラジオの「コーセー歌謡ベストテン」と「ポップス・ベストテン」を続けて聴くのがいちばんの楽しみだった。
12歳~14歳の頃だったと思う。

チープ・トリックの「ドリーム・ポリス」などと同時期(だったと思うが)にブロンディの「サンデー・ガール」を好きになった。
当時毎月買っていた『月刊明星』というアイドル誌には歌本が付録で付いていて、後ろのほうに洋楽がちょっとだけ載っていた。
英語の歌詞にカタカナが振ってあって、わたしはラジオに合わせてカタカナで一生懸命歌っていたことを覚えている。

そういえば『月刊明星』のライバル誌には『月刊平凡』というものがあって、本屋でも並べておいてあったものだが、『月刊平凡』のほうを買ったことはなかった。なぜなのか当時のことは思い出せないが、しかし今考えるとアイドル雑誌の名前が『平凡』なんて、なんてつまらない名前だろうと思う。平凡、て。

初期のブロンディは、ラモーンズやテレヴィジョン、トーキング・ヘッズなどと同じCBGBというライブハウスの出身なのでいちおうニューヨークパンクの一味ということになっていたものだが、当時の少年であったわたしはそんなことは知る由もない。

ブロンディの音楽はパンク・ロックではなかったが、しかし「原点回帰」という方向性はパンクの連中と同じ方向を向いているわけで、わたしはラモーンズもブロンディもそんなに変わらないと思っている。

ブロンディの音楽には50~60年代のヒットパレード的な香りがする。
わたしがそういうものを大好きなのは、少年の頃に、スイッチを入れると音楽が流れてくるという夢のような機械(ラジオ)を初恋の女の子の想い出のように忘れられないせいかもしれない。

ブロンディの音楽は、ラジオから流れてくるのがよく似合う。
もちろん最上級の褒め言葉のつもりである。