名盤100選 67 カーティス・メイフィールド『カーティス』(1970)

カーティス・メイフィールドがインプレッションズを抜けて最初に出したソロ・アルバムである。
たぶん12年ぐらい前、わたしはこのアルバムを初めて聴いて、すぐに好きになった。
わたしはだいたいにおいて、アルバムを一度聴いたぐらいではよくわからず、5回も6回も聴いてからやっと好きか嫌いかがわかるという鈍いやつだ。
でもこのアルバムは、初めて聴いた瞬間に、ああこれは名盤だなあと思ったことをよく覚えている。

マーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイ、スティーヴィー・ワンダーなどとともに、カーティス・メイフィールドの音楽は「ニュー・ソウル」と呼ばれた。
ニュー・ソウルと言えば社会問題や人種問題なども取り上げたシリアスな歌詞が特徴だが、わたしは60年代ロックのコンセプトアルバムに影響を受けたような斬新なサウンドが気に入った。
マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』の空間的な拡がりのある美しい音のサウンドも好きだが、わたしはどちらかというとこの『カーティス』をより好んで聴いた。

朗々と歌わないファルセットがなんだか不気味で、不穏なパーカッションが原始のアフリカを連想させる、先鋭的なサウンドだ。
攻撃的で、情念が剥き出しになった音楽はしかし冷静な知性によってまとめあげられ、最初から最後までひとつながりのシンフォニーのようにも聴こえる。
久しぶりに聴いてみたが、やはり最後まで一気に聴かせる。ドラマチックな展開で目が離せない、というか耳が離せない、といった感じだ。
とくに4曲目~5曲目あたりの盛り上がりがたまりません。