はじめてのマーヴィン・ゲイ【必聴名曲5選】5 MARVIN GAYE Songs to Listen to First

60年代にモータウン・レコードからヒット曲を連発したマーヴィン・ゲイは、70年代に入ると〈ニュー・ソウル〉と呼ばれる画期的な音楽を生み出す。

ヴォーカリストとしても大きくスタイルを変化させ、作曲家として、そしてサウンドメーカーとしても才能を開花させた。
また、それまでは分業制だったレコード制作を、アーティストのヴィジョンを強く反映させ、歌のテーマとそれに合った独自のサウンドや音楽スタイルを深く追求するその姿勢が後進のアーティストたちにも大きな影響を与えた。

歌詞の内容も、ベトナム戦争に出征した実弟からの手紙に強い影響を受け、反戦運動やその鎮圧による国内の混乱、根深く残る人種問題、環境問題などの社会状況への自身の想いや怒りを歌うという、それまでのR&Bにはなかった、社会問題に向き合った、リアリティに満ちた歌詞も画期的だった。

その後はアルバムごとにテーマを変え、愛やセックスを赤裸々に歌ってセックス・シンボルとなったり、しかしその裏では結婚生活が破綻して泥沼離婚調停を争い、その事情と見解を詳細に歌う内容のみでアルバムを1枚作るなどもした。

プライベートでは鬱病の発症や薬物依存、人気の低迷そして破産など苦汁をなめた。
カッコ良くもあればカッコ悪くもある、全部まとめてものすごく人間臭いアーティストだった。

そして1984年、マーヴィン・ゲイは自宅で両親の喧嘩を止めようとして、激昂した父親に銃で撃たれて死亡した。44歳だった。その銃はマーヴィンが父親にプレゼントしたものだったという。アーティストの死因では、いちばん悲しい話だ。

以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきマーヴィン・ゲイの至極の名曲5選です。

悲しいうわさ（1968）
I Heard It Through the Grapevine

ノーマン・ホイットフィールドとバレット・ストロングによって書かれた、恋人が自分を捨てようとしていると人づてに聞いてショックを受け、心配で頭がおかしくなりそうだと歌う曲。
最初に録音したのはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズだったが、マーヴィン・ゲイのバージョンは自身初となる全米1位の大ヒットとなった。ロックファンにはC.C.R.のバージョンもよく知られている。

「悲しいうわさ」の過去記事はこちら

エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ（1967）
Ain’t No Mountain High Enough

後に夫婦デュオとして活動したアシュフォード&シンプソンの作。
同じモータウン所属の女性歌手タミー・テレルとのデュエット作で、全米19位のヒットとなった。
2人はデュエット・パートナーとして3枚のシングルと1枚のアルバムをリリースしたが、タミー・テレルは脳腫瘍に侵され、この3年後に24歳の若さで死去した。

「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」の過去記事はこちら

ホワッツ・ゴーイン・オン（1971）
What’s Going On

当時の社会状況を憂うリアルな歌詞と斬新なサウンドによる新時代のコンセプト・アルバムとして〈ニュー・ソウル〉の象徴となった名盤『ホワッツ・ゴーイン・オン』のタイトル曲。全米2位の大ヒットとなった。
「以前の僕はあまりに大声で歌いすぎていた」と語ったように、ヴォーカルの柔らかく優しい歌い方が、すべてを包み込むようなスケールの大きさを感じるサウンドによく合っている。だから聴いた瞬間に誰もが感動するのだろう。

「ホワッツ・ゴーイン・オン」の過去記事はこちら