90年代メロコア・ブームの先駆 〜グリーン・デイ『ドゥーキー』(1994)【最強ロック名盤500】#41

ドゥーキー

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#41
Green Day
“Dookie” (1994)

おっ。ガキが出てきたな。

と思ったのだった。

そのとき、わたしは28歳だった。
グリーン・デイの3人は22歳だった。

ストーン・ローゼスから始まり、、ピクシーズ、ダイナソーJr、ニルヴァーナ、スマパン、オアシス、ブラー、レディオヘッド、マニックスあたりの世代が、わたしの年齢の上下3歳ぐらいの世代なのだ。
90年代前半のロックシーンで活躍していた連中の多くがわたしと同世代だったのだが、このグリーン・デイがいきなりブレイクした時には、ずいぶんと年下のやつが出てきたなあ、というのが当時のわたしの印象だった。

6歳離れるとさすがに「同世代」という感じはしなくなる。
「新世代」の登場だった。

しかし新世代とはいえグリーン・デイの音楽は、それほど新しいものではなく、むしろわたしがよーく知っている、セックス・ピストルズやクラッシュ、ラモーンズなどの70年代パンクのスタイルを模倣しているのは明らかだった。
同世代ではないが、なんとなく「弟の同級生」みたいな感じで、かわいい奴らだとわたしは思った。

わたしがロック・アーティストに対してそんなふうに思ったのは彼らが最初だ。わたしにとって、初めて現れた「年下のロック」だった。

「年下のロック」を聴くことは、それまで物心ついて以来聴いてきた、年上のロックや同世代のロックを聴くのとはなんだかずいぶん違う感覚だった。

年上のアーティストならその偉大な音楽にリスペクトを感じながら熱くなれるし、同世代なら共感とリアリティを感じながら熱くなれるが、「年下のロック」に対してはどこか「温かい眼差しで」聴くことはできても、決して熱い気持ちにはなれないような気がする。

年が離れていけばいくほど、彼らの世界観に共鳴しにくくなり、リアリティを感じにくくなり、その音楽がピンとこなくなるのだろう。そんなふうに人は、30歳も過ぎた頃にはリアルタイムの音楽から離れていくのかもしれない。

6歳差のグリーン・デイはそれでもまだギリギリ楽しめた。
「なんだ、今どきパンクの真似ごとかよ」とついつい先輩ヅラして辛口になってしまうわれわれ世代も、そうは言いながらもその曲の良さとイキの良さに思わず頬が緩んでしまった。

ソニック・ユースやニルヴァーナなどが発展させた90年代式パンク・ロックに比べると「後退」という印象を感じるのは否めないが、しかしそのシンプルでキャッチーな楽曲と、若さあふれる前のめりの勢いのある演奏はやはり魅力的だ。

本作はメジャー・デビューとなった、グリーン・デイの通算3作目で、1994年2月にリリースされた。

ドラムの合図だけでいきなり歌い出すオープニング・トラックの「バーンアウト」を聴いだけでこのバンドが好きになった。疾走感と潔さが最高だ。

続く「ハヴィング・ア・ブラスト」も一緒に口づさみたくなるし、シングルヒットした「ロングヴュー」「ウェルカム・トゥ・パラダイス」と楽しい曲が続く。

そして米オルタナチャートで5週連続1位の大ヒットとなった「バスケットケース」はわたしも彼らの曲の中で最も好きな曲だ。90年代を代表する1曲に数えていいだろう。

アルバムは全米2位という大ヒットとなり、1,500万枚を売り上げた。ロック史上、最も売れたパンク・ロック・アルバムだ。

このグリーン・デイの爆発的なブレイクによって、「メロコア」または「ポップ・パンク」と呼ばれるジャンルが台頭し、米西海岸を中心に続々と雨後の筍の年下ロックが出てきたが、わたしが好きになれたのは結局、このグリーン・デイだけだったな。

↓ アルバムの冒頭を飾る「バーンアウト」。前のめりの疾走感とポップなメロディ、シンプルを極めた潔さがたまらない。

↓ 米オルタナチャートで5週連続1位の大ヒットとなった代表曲「バスケットケース」。

(Goro)

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