尾崎紀世彦/また逢う日まで(1971)

尾崎紀世彦エッセンシャル・ベスト

【ニッポンの名曲】#19
作詞:阿久悠 作曲・編曲:筒美京平

初期の筒美京平は、作詞家の橋本淳と組むことが多く、阿久悠とのコンビはそれほど多くない。この曲はそのコンビでのほぼ初めてに近い作品である。

わたしは日本の作詞家では阿久悠がいちばん好きなので、この「阿久悠×筒美京平」の黄金コンビは最強である。

その初期の代表曲がこの「また逢う日まで」で、まるでシナトラの「マイ・ウェイ」やエルヴィスの「サスピシャス・マインド」のような、それまでの日本の歌謡曲とは別次元のスケールの大きさの歌を、これまた日本人離れした尾崎紀世彦という歌手に歌わせ、日本の「スタンダード・ポップス」を創造したのだった。


第13回日本レコード大賞受賞。

この時代の「レコード大賞」の権威と価値は凄かったのだ。
年末には日本中が固唾を飲んでその賞の行方を見守ったものだった。

今はそれほどではない。

昨年のレコード大賞が誰だったかなんて、どれだけの国民が知っていて、どれだけの影響があっただろうか。ちなみに、昨年の受賞者は乃木坂46である。

もういろんな大人の事情やカラクリのこともとっくにバレてしまっているので、もはやその賞がなにを讃えているのかすらわからない。

今ならたぶん、M-1グランプリの王者のほうがもっと世間の注目を集めているのに違いない。


日本中の老若男女が口づさむ国民的流行歌が生まれることは、もうほとんどなくなってしまった。
それは音楽ジャンルとリスナーの嗜好の多様化だけではなく、それを書ける職人的なソングライターがいなくなってしまったこともあるのだろう。