No.444 ニック・ドレイク/ピンク・ムーン (1972)

Pink Moon
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その444
Nick Drake – pink moon

イギリスのフォーク・シンガー、ニック・ドレイクは、生前はマニアックに高い評価を得ながらも商業的成功に恵まれず、3枚のアルバムだけを遺して、この世を去った。
しかしなぜか90年代頃から再評価され、わたしもそれで知ったが、現代の若いアーティストたちにも彼の音楽をリスペクトする者は多い。

この曲は彼の最後のアルバム『ピンク・ムーン』のタイトル曲だ。
1stと2ndはアコギの力強いプレイを中心にストリングスやパーカッションも入ったロマンチックで美しいアルバムなのだけども、この最後の『ピンク・ムーン』は彼の声とギター、そして彼が弾くピアノがすこしだけ入っている以外にはなにもない。
このアルバムはアレンジをつけてほしくない、というのがニックの意向だった。

他人とのコミュニケーションが苦手だった彼は、その頃には口もきけないほどの鬱病に悩まされ、アルバム制作後にすぐに精神科に入院するほどだった。

この曲には、ろうそくの灯が今にも消えそうに揺れているような儚さと、神経が剥き出しになったようなヒリヒリとした痛々しさを感じる。
心の闇のようなものを隠すこともせずに、そのまま吐き出されているかのようだ。
唯一中間のピアノのフレーズだけが、真っ暗闇の荒野に一筋の月明かりがさすように、美しく響く。

この3枚目のアルバムもやはり売れなかった。
彼はシンガーの道をあきらめざるを得ないと思ったのか、レコーディング・スタジオで働いてみたり、コンピューター・プログラマーの勉強をしたそうだが、それらもうまくいかなかった。

『ピンク・ムーン』の発表から2年後、自宅のベッドで冷たくなっているのを母親に発見された。
いつも服用していた抗鬱剤の誤用とされ、自殺ではないかとも言われているが、真偽はわからないままだ。

21歳でデビューし、たったの26歳で死んだ。
生涯孤独だった彼は、カートやジャニスたちが待つ《27クラブ》に入ることすらも叶わなかったのだ。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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コメント

  1. ごろー より:

    Re:初めて
    たまにこういうとっつきにくいやつも入れてます。
    これはなんていうか、マイナーなやつも混ぜ込んで少しでも名前を広める、っていう使命感ですかね(笑)

  2. r-blues より:

    初めて
    知らないアーティストが取り上げられたのは初めてです。
    だから逆に興味が湧きました(-.^)/~~~