No.445 ランディ・ニューマン/セイル・アウェイ (1972)

Sail Away
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その445
Randy Newman – Sail Away

ランディ・ニューマンはロサンゼルス出身のシンガーソングライターで、1968年にデビューした。
ブルース・スプリングスティーンやジャクソン・ブラウン、イーグルスらとも親交があるそうだ。
この曲は彼の、初期の代表曲だ。

わたしははじめ、この曲の美しいアレンジやメロディ、そして独特のシブい歌声を気に入って好きになったのだけど、さらにこの曲を魅力的にしているのは、その胸を掴まれるような、目ん玉をえぐりとられるような痛烈な歌詞だ。

普通に「Sail Away」というと、「航海に出よう」とか「旅立とう」みたいな意味だそうだが、この歌では繰り返し歌われるこの言葉がものすごく重く響く。
ここで歌われているのは、アフリカ人を騙して船に乗せ、アメリカ合衆国へと運ぶ奴隷貿易のことだからだ。

アメリカならいつでも食べ物が手に入るよ
ジャングルで足を引きずって探す必要もない
イエスに捧げる歌を歌いながら、一日中ワインを飲んでいられる
アメリカ人になるってことは、素晴らしいことなんだ

ライオンもトラもヘビもいない
甘いスイカやケーキがあって、誰もが幸せなんだ
さあ、船に乗り込んで、一緒に旅立とう

船に乗って旅立とう
大海原を越えて、チャールストン湾へ
船に乗って旅立とう
大海原を越えて、チャールストン湾へ
(written by Randy Newman)

サウスカロライナ州のチャールストン湾というのは、奴隷貿易のメッカであり、南北戦争発端の町でもある。
美しいメロディを纏ってはいるものの、中身は激辛である。これを歌うのはなかなか勇気がいるだろう。
ラジオでは流れたのかどうかわからないが、皮肉が通じない人々には、古き良き時代のアメリカを讃えたものに聴こえたのかもしれない。

現在のランディ・ニューマンは『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』などディズニー作品の音楽を手掛け、アカデミー賞まで受賞している。
良かったなあ。