名盤100選 72 ピーター・ガブリエル『シェイキング・ザ・ツリー~グレイテスト・ヒッツ』(1990)

シェイキング・ザ・トゥリー/グレイテスト・ヒッツ

昔イギリスにジェネシスというバンドがあった。
1970年代はプログレッシヴ・ロックのバンドとしてマニアの間で人気を博し、ヴォーカルのピーター・ガブリエルが脱退すると、80年代はドラマーのフィル・コリンズがヴォーカルをとって(なぜか声がピーター・ガブリエルにそっくりだったのだ)路線変更し、ポップ・バンドとしてヒット曲を連発した。

わたしはジェネシスにはほとんど興味がなくて、フィル・コリンズにはもっと興味がない。
ピーター・ガブリエルにも興味はなかったはずだったのだけど、ある時このアルバムをたぶんレンタルで借りて、なんとなく「夜に聴くのにちょうどいい」と思って繰り返し聴き、今もときどき思い出したように聴き続けている。

わたしは若い頃からパンクロックみたいなにぎやかしい音楽が好きだったけど、そういうものはあまり夜には聴かなくて、夜にはそれにふさわしい「夜の音楽」を聴きたいと思う。
ドアーズやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、キュアー、ニック・ケイヴなんかはやはり「夜の音楽」と言えるだろう。デヴィッド・ボウイなんかも夜の感じだ。オーティス・レディングやサム・クックなどのソウルミュージックは夜のドライヴにぴったりだ。

ピーター・ガブリエルは育ちの良い秀才の完璧主義者、みたいなイメージをわたしは勝手に持っているのだけど、その音楽のひんやりするほどに人工的な音響と、妙に人間臭い生々しい声、そして豊かなメロディーというミスマッチとも思える魅力にわたしは興味を惹かれた。
また、アフリカ音楽などワールド・ミュージックを取り入れた先駆者としても有名だが、その取り入れ方がまた超先進技術による実験工房のようで、その「静かな異常」を思わせるサウンドはまさに夜の音楽にふさわしい。

このアルバムは1990年に発売された、それまでの5枚のオリジナル・アルバムからセレクトされたベスト・アルバムである。
ちなみにピーター・ガブリエルのアルバムは1枚目から4枚目まですべて「Peter Gabriel」というタイトルである。国によっては勝手に「1」「2」と付けていたり、ジャケのデザインから「車」「メルトダウン」などと呼ばれていたりする。日本では「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅳ」という「邦題」が付けられている。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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