竹内まりや/駅(1987)

駅

【ニッポンの名曲】#59
作詞・作曲:竹内まりや 編曲:山下達郎

1980年の「不思議なピーチパイ」でアイドル歌手としてブレイクし、ソングライターとしてアン・ルイスに「リンダ」を、河合奈保子に「けんかをやめて」を提供した竹内まりやは、その初期の作風から50~60年代のアメリカン・ポップス的なイメージが強く、また彼女の少し低めで、ねっとりとした声がよく似合っていた。

しかしこの「駅」はそれまでの竹内まりやのイメージにそぐわない、純和風の新境地だった。
暗い影を帯びた、ウェットな質感のモロ歌謡曲であり、まるで火曜サスペンス劇場かなにかの主題歌のようだ。

もともとは中森明菜のアルバム用の提供曲だった。
しかし竹内まりやの夫である山下達郎は、中森明菜バージョンを聴いて、その出来の悪いプロデュースワークに激怒したという。

翌年に竹内まりやはこの曲をセルフカバーし、シングルとして発表するとオリコンチャート1位の大ヒットとなった。

彼女はTVのインタビューで。「ソングライター・竹内まりやとしては、歌手・竹内まりやが歌いそうにない曲を書いて歌わせてみるのが楽しい」と語っていた。
この「駅」もそうしたチャレンジのひとつだったのかもしれない。

この曲は彼女のイメージの幅を大幅に拡げ、今も彼女の代表曲となっている。