作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童 編曲:萩田光雄
《ロックの快楽》なのだから、山口百恵を取り上げるならこの曲に触れないわけにはいかないだろう。
引退直前、山口百恵30枚目のシングルは、アイドルが歌うにはかなり本格的でド派手なロックンロールだった。さすがは宇崎竜童、こういう曲を書かせたら当時は右に出る者はいなかった。阿木耀子のユーモアと毒に溢れた歌詞がまたカッコいい。
それにしてもこの堂に入った百恵ちゃんのパフォーマンスはどうだ。多少の振り付けはあるものの、長い間奏でも変に踊ったりしないのが、逆にカッコいい。
以前、娘とも話していたのだけど、今の若者たちは、懐メロ番組で昔のアイドルがひとりで歌っている姿を見ると驚くという。
AKBにしても、ハロプロにしても、ジャニーズにしても、グループで歌うのがあたりまえで、1人でTVで歌っているアイドルなど、男女ともに皆無である。
なぜなのかはよくわからない。実際、グループを卒業してソロ・デビューしても最近はまるで売れたためしがないし。
昭和の時代のアイドルはグループもいたけれど、ソロの方が多かった。中でも山口百恵は圧倒的な存在感で異光を放っていた。
こんな曲が歌えたのも彼女しかいなかった。
しかもこのとき、彼女はたったの21歳だ。そしてこの半年後には芸能界を引退し、その後一度たりとも復帰することはなかった。
7年半の芸能活動で、シングル31枚、オリジナルアルバム22枚、編集アルバム23枚、計2千万枚以上を売り、70年代で最もレコードを売り上げた歌手となった。
引退直前に沢田研二と山口百恵がラジオで対談する特別番組を当時聴いた。
なぜか今でも鮮明に憶えている会話がある。
沢田研二がこの「ロックンロール・ウィドウ」を絶賛し、「シャウトするのがエクスタシー」などという歌詞も出てくるので、「シャウトもちゃんとできてるしね」と褒めると、百恵が恥ずかしそうに「シャウトってなんですか?」と尋ねて、沢田が思わず大笑いするシーンだった。
歌っているときのあの堂々たるスーパースター感と、普段の21歳のまだ少女のようなあどけなさも残る素の姿のギャップが、彼女の魅力でもあったのだ。