ブラー/フォー・トゥモロウ(1993)

Modern Life Is Rubbish [12 inch Analog]

【90年代ロックの快楽】
Blur – For Tommorow

古き良きイギリスのノスタルジアと新鮮なポップ・センスが同居するような独自路線を確立し2ndアルバム『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ(Modern Life Is Rubbish)』のオープニングを飾る、そのタイトルの通り、ブラーの新たなスタートを象徴するシングルだ。

ただし、この段階でもまだ全英28位と、セールス的には苦戦している。

轟音ギターとグランジ・ブームの真っただ中で、その真逆を行くようなポップで控えめなサウンドに当時のわたしも「だめだこりゃ!」と一声叫んでCDラックに突っ込んだものだった。

しかし今あらためて思えば、あの時代によくこんなアプローチをしたものだ。
レコード会社もやはり録り直しを要求したり、ニルヴァーナをプロデュースしたブッチ・ヴィグに再プロデュースを依頼しようとしたりと、決してこの路線を快く思わなかったらしい。案の定、セールスもイマイチだった。それでもブラー(というかデーモン)が強情にこの路線にこだわり、譲らなかったのは、先見の明があったということなのだろう。レコード会社とわたしにはなかったが。

キンクスの影響を感じるような、英国人のライフスタイルや伝統にもこだわったブリティッシュ・ポップスの再生に方向性を定めたブラーは、この翌年に登場するオアシスと火花を散らしながら、〈ブリット・ポップ〉という大きなムーヴメントを先導することになる。

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