キースの人生を変えた大発見【ストーンズの60年を聴き倒す】#30

Honky tonk women / you can't always get what you want - Rolling Stones - ( 7'' 1枚 ) - 売り手: sonic-records - Id:3017417971

A) ホンキー・トンク・ウィメン
B) 無情の世界

A) Honky Tonk Women
B) You Can’t Always Get What You Want
The Rolling Stones Single 1969

デビュー以来初めての外部から招聘したプロデューサー、ジミー・ミラーとの共同作業が功を奏し、シングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、アルバム『べガーズ・バンケット』と大傑作を連発し、評価もチャート成績もうなぎ上りと波に乗るストーンズが、次に放ったのがこのシングルだ。これまた全英1位、全米1位の特大ヒットとなり、バンドの代表曲のひとつに名を連ねた。

元々はカントリー風の曲だったのをバンドで揉んでいる間にこのクールなアレンジになったそうだが、画期的なのは、その後のキース・リチャーズのトレードマークとなる、オープンGチューニングの5弦ギターが初めて使われたということだ。

オープンGチューニングとは、あらかじめギターの弦をどこも押さえなくてもGのコードが鳴るように調弦しておくことだが、6弦を使わない意味やそれによる音楽的な効果については奥の深い話となり、ここでわたし如きが説明するのは荷が重すぎるが、後の名曲「ブラウン・シュガー」や「スタート・ミー・アップ」のイントロのギターの響きを聴いて「かっけー!」と思ったら、それがオープンGチューニングのファンキーな響きによる効果でもあると思って間違いない。

このオープンGチューニングをキースはライ・クーダーから教わったそうだが、「オープンGチューニングの発見で人生が変わった」「指の下にまったく新しい宇宙が広がった」と、それがその後の彼の演奏やソングライティングに大きな影響を及ぼしたことを自伝でも強調して語っている。

そんなオープンGのギターが初めて使われた「ホンキー・トンク・ウィメン」の録音は、当時20才のギタリスト、ミック・テイラーが初めて参加したことでも、ストーンズの歴史において二重に重要な意味を持つ新たな一歩となった。
彼は、当時心身ともに病んでしまいギターも弾かなくなっていたブライアン・ジョーンズの替わりとして、招かれたのだった。そしてこの若者がやがて、ストーンズの黄金時代を支える重要な役割を担っていくことになる。

B面の「無情の世界」は、この時点ではアルバム未収録曲だったが、前年に撮影された『ロックンロール・サーカス』ではすでに披露されていた。そしてこの5ヶ月後にリリースされるアルバム『レット・イット・ブリード』に収録されることになる。

初めはミックがひとりで書いてきたフォーク・ソングのような曲だったが、リズムをバンドで練り直し、コーラスも付けてゴスペル風にした。ドラムはチャーリーではなく、ジミー・ミラーが叩いている。チャーリーがこの曲の独特のグルーヴを演奏できなかったためらしいが、キーボードで参加したアル・クーパーは「チャーリーは面白くなさそうだったが、潔く振舞っていた」と回想している。また、ブライアンはスタジオにはいたが演奏に参加せず「床に寝そべって植物に関する本を読んでいた」とも語っている。

アルバムバージョンではちょっと大仰なオペラ風の女声コーラスから始まるが、このシングルバージョンにはそれがない。あのコーラスがあまり好きではないわたしは、シングルバージョンの方が好きだ。下の動画はこの曲が初めて披露された『ロックンロール・サーカス』での映像だ。

このシングルは、ブライアン・ジョーンズが自宅のプールで溺死しているのが発見された翌日、1969年7月4日にリリースされた。

(Goro)

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