【きょうの余談】年下のロック

Graffitia — Green Day | Last.fm

Green Day

先日、たまたま見ていたバラエティ番組で、お笑い芸人の永野が若手芸人に対して「年下の芸人の言うことなんて、ひとつも笑えない」と発言し、理不尽な難クセと受け取られていたが、わたしは、ああこれわたしの「年下のロック」と同じだなと、共感したものだ。

このブログで2020年12月に公開したスーパーグラスの記事で、わたしは以下のように書いている。

わたしは当時28歳で、1歳年下のノエル・ギャラガーや2歳年下のデーモン・アルバーンぐらいまでは「同世代」と感じていたけれど、さすがに10歳年下のスーパーグラスはそうは思えなかった。
ついに新世代が出て来たなあと、急にオッサンになったような気分になり、不思議なもので、10歳も年下の連中がやる音楽には、それがたとえわたしが好きなパンク風の音楽であっても、なぜか共感したり、アツくなったりはしないのだった。

わたしのこのブログを読んでいる方のほとんどは、リアルタイムで現在のロックを聴いている若い世代ではなく、かつて若い頃にロックを聴いていた、オールド・ロック・ファンだと想像できる。

きっとみなさんも、それぞれいつ頃からかリアルタイムのロックを聴かなくなったはずだけれども、それはたぶん自身がある程度歳を取ったときに、新しい世代の「年下のロック」がシーンの中心となり、彼らの音楽に、共感できなくなったからではないだろうか。

1966年生まれのわたしで言うと、少し年上から少し年下まで含む「同世代のアーティスト」には次のような人物がいる。数字は生年である。

イアン・ブラウン(ストーン・ローゼス)1963
フランク・ブラック(ピクシーズ)1965
J・マスシス(ダイナソーJr.)1965
カート・コバーン(ニルヴァーナ)1967
ノエル・ギャラガー(オアシス)1967
ブレット・アンダーソン(スウェード)1967
ビリー・コーガン(スマッシング・パンプキンズ)1967
デーモン・アルバーン(ブラー)1968
トム・ヨーク(レディオヘッド)1968
デイヴ・グロール(フー・ファイターズ)1969
ジェームス(マニック・ストリート・プリーチャーズ)1969

わたしの感覚では、だいたいこの1963〜69年あたりの範囲のミュージシャンたちが「同世代」と感じている。

昨日の記事に書いた1972年生まれのグリーン・デイあたりはまだ「弟の同級生」ぐらいの感覚で温かい気持ちで聴けるが、しかしわたしが最初に「全然ピンとこない」と思い、それを支持する記事を読んでもまったく理解できないと感じたのが、2000年以降に流行した、ザ・リバティーンズやストロークスだった。

リバティーンズの中心人物たち、ピート・ドハーティは1979年生まれ、カール・バラーは1978年生まれである。もはやひと周り違うのだ。

さすがにひと周りも違ってくると、どんな音楽をやったところで、共感が難しくなるようだ。きっと彼らの世代とはそもそも世界観が違いすぎるのだろう。もはやわたしは、彼らの世界観やリアリティに共振する感覚を持ち合わせていないのだろうと思う。

ストロークスのジュリアン・カサブランカスもやはり1978年生まれで、ちょうどひと回り違う。

ストロークスも最初は、何がいいのかわからなかった。ただし、繰り返し聴くうちになかなかカッコいいなと思うようになった。しかしそれはあくまでも批評するような耳で聴いて、良いと思ってるだけで、決して同世代や年上のアーティストのように、共感したり、リアリティを感じたり、心に刺さったり、尊敬したり、憧れたり、という感覚はないのである。

エラそうな例えになってしまうけれども、年上の大先輩のロックはレコードやラジオで聴いている感覚、同世代のロックは観客席で聴いている感覚なのに対して、年下のロックは、審査員席で聴いているぐらいの感覚の違いを感じるのだ。

ひと周り年下の世代の世界観に共鳴するのは、土台無理な話なのだとわたしは思う。
もちろん、年上や同世代のロックだってまったく共感できないものはいくらでもあるが、ひと周り年下の世代との決定的な、どうにも越えられない距離がある感じとはまた違うのである。

まあそういうものならそういうもので、無理に年下のロックを楽しもうとしなくても構わない、とわたしは思う。年をとったから最新流行のものが理解できない、などと引け目を感じる必要もない。

新しいものが必ずしも進化した良いものでもなければ、ましてや古いものより正しいというわけでもないことは、われわれはその人生経験からとっくに熟知していることだ。ただ若いアーティストと若いリスナーには共通の世界観があるという、それだけのことなのだ。彼らもまた歳をとれば年下の音楽を聴かなくなるのだ。

さて、話は逸れるが、現在進行中の【最強ロック名盤500】は、上に挙げたわたしの同世代たちが活躍し、わたしが最も熱心にリアルタイムのロックを聴いた時期、1989年から1995年あたりの名盤のチョイスからスタートした。

この90年代前半の時代の名盤は「#50」まででいったん終わる予定だ。
「#51」からはロックンロール誕生の時代に一気にタイム・スリップし、ロックの歴史を辿りながら、リリース順に名盤を取り上げていく予定である。

乞うご期待。

↓ グリーン・デイと観客の泥の投げ合いになった伝説のウッドストック94のステージ。

(Goro)

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