エヴァリー・ブラザーズ『エヴァリー・ブラザーズ』(1958)【最強ロック名盤500】#63

Everly Brothers -Hq- [Analog]

⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#63
The Everly Brothers

“The Everly Brothers” (1958)

ドン・エヴァリーとフィル・エヴァリーの実の兄弟によるデュオ、エヴァリー・ブラザーズは、1956年にデビューした。兄のドンがケンタッキー州ブラウニー、弟のフィルはイリノイ州シカゴでそれぞれ生まれている。

1956年といえばロックンロール旋風が吹き荒れていた頃だが、カントリー・ミュージシャンの父親を持つ彼らは、カントリーの伝統的なクロス・ハーモニーによる歌声とアコースティック・ギターを中心に据えたサウンドを武器に、ロックンロールへのアプローチを試みたデュオだった。

彼らの、息のぴったり合った緊密なハーモニーはその後のビートルズやビーチ・ボーイズなどに大きな影響を与えた。また、サイモン&ガーファンクルは、彼らに憧れてデュオを結成した。ロックンロール草創期において「ハーモニー」という概念をロックンロールに持ち込むという、極めて重要な役割を果たした兄弟である。

本作は1958年にリリースされた、エヴァリー・ブラザーズの1stアルバムだ。カッコ内はシングルチャートの順位。

【収録曲】

SIDE A

1 かわいい彼女(全米26位)
2 メイビー・トゥモロウ
3 バイ・バイ・ラヴ(全米2位・全英6位)
4 ブラン・ニュー・ハートエイク
5 キープ・ア・ノッキン
6 ビー・バップ・ア・ルーラ

SIDE B

1 リップ・イット・アップ
2 もう気にしないよ
3 起きろよスージー(全米1位・全英2位)
4 リーヴ・マイ・ウーマン・アローン
5 話してやろう(全米26位)
6 ヘイ・ドール・ベイビー

2枚目のシングルとしてリリースされ、全米シングルチャート2位のヒットで彼らを大ブレイクさせたA3「バイ・バイ・ラヴ」は、カントリーチャートで1位、R&Bチャートでも5位とジャンルを超えた支持を得た。さらに続く3枚目のシングル「起きろよスージー」は、全米チャート、カントリーチャート、R&Bチャートのすべてで1位を獲得するというトリプルクラウンを達成している。当時の彼らがいかに独創的で、人種も世代も超えて全方位から支持を集めていたことがよくわかる。

カントリー風のハーモニーにアコギを中心に据えた爽やかなサウンドの印象から、エヴァリー・ブラザーズといえばカントリー・ベースのポップスという印象が強いが、この1stアルバムではA1とB4がレイ・チャールズ、A6はジーン・ヴィンセント、A5とB1はリトル・リチャードのそれぞれカバーが収録され、R&B・ロックンロール色の濃い内容が、彼らの目指した方向性をよく顕している。

ポップなヒットシングルだけでなく、彼らの緊密なハーモニーとアコースティック・サウンドによって新鮮な印象に生まれ変わっている上記のようなカバー曲が、本作の魅力でもある。「ロックンロールってこういうアプローチもあるよ」と新たな切り口を示してくれたのが彼らだったのだ。

アコギを背負い、バイクに跨ったジャケットのアートワークがカッコいい。
カントリーの伝統的な世界を飛び出し、新しい時代の音楽、ロックンロールの世界へと殴り込んでいく旅の始まりを表しているかのようだ。


↓ 全米チャート、カントリーチャート、R&Bチャートのすべてで1位を獲得した大ヒット曲「起きろよスージー」。高校生のカップルが映画館でデートの最中に眠り込んでしまい、目覚めたときは門限の10時をとっくに過ぎた朝の4時で大慌て、という歌だ。

↓ ジーン・ヴィンセントのヒット曲「ビー・バップ・ア・ルーラ」のカバー。

(Goro)

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