メタリカをクビになった男の逆襲〜メガデス『ピース・セルズ…バット・フーズ・バイイング?』 (1986)【食わず嫌いロック】#32

ピース・セルズ...バット・フーズ・バイイング?

Megadeth
“Peace Sells… But Who’s Buying?” (1986)

メタリカの『メタル・マスター』と同じ1986年にリリースされたメガデスの2nd『ピース・セルズ…バット・フーズ・バイイング?』を聴いてみた。

このアルバムを聴くまで、わたしがメガデスについて知っていることはたったひとつだけだった。「メタリカをクビになったギタリストが結成したバンド」ということだけだ。

メタリカのドキュメンタリー映画『メタリカ:真実の瞬間』にはそのギタリスト、メガデスではヴォーカルも務める中心人物デイヴ・ムステインが出演している。メタリカのレコードデビュー直前になって、アルコール依存や暴力沙汰を理由にバンドを解雇された時のショック、その後も続いた屈辱と苦しみ、メガデスで成功しながらも断ち切れないメタリカへの想いなどを、赤裸々に語っている。わたしは多くの音楽映画を観てきたが、これほど激しく胸を揺さぶられるシーンを見たことはない。

そんな負け犬の怨念がメラメラと燃え上がるようなアルバムは、こんなにも刺々しいエネルギーを放射する物凄いサウンドになるのかとわたしはビビった。まあ、なにもかもメタリカへの怨念でできているわけではあるまいが。

歌詞は政治や社会問題なども歌われているらしく、知的なという意味で「インテレクチュアル・スラッシュ・メタル」などと評されることもあるらしいが、わたしは英語がわからないので、内容は一切知らない。あまり知りたいとも思わない。

しかし、重々しいギターリフに気が触れたようなギターソロ、力まかせに叩きつけるようなドラム、呪詛のようなヴォーカル。この戦闘体制のようなサウンドが、意外と面白いのだ。わたしは気に入った。メタリカの『メタル・マスター』よりこっちの方が好きかもしれない。ストイックなメタリカにはなかった、熱い感情の爆発みたいなものを感じるからかもしれない。

まあ、わたしなど所詮ヘヴィメタルのことはよくわからないので、単に好みの問題である。
歌は別に良くないし、オリジナリティもどの程度あるのか他を聴いていないからわからないけれども、とにかく気狂いじみた熱気と暴力性、ヤケクソみたいなのにバンドがしっかり一丸となっている勢いも感じられる骨太な音が魅力的なのだ。聴いているとなぜか胸を熱くさせる。

できることならデイヴ・ムステインに『メタル・マスター』よりこっちの方が好きだよ、と伝えたいものだ。

(Goro)

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