“Reign In Blood” (1986)
メタリカ、メガデスに加えて、スレイヤー、アンスラックスの4組を、80年代当時は「スラッシュ・メタル四天王」と呼んだらしい。
メタリカとメガデスについては無事食わず嫌いを克服できたので、次はスレイヤーに挑戦してみた。彼らの代表作として知られる1986年発表の3rd『レイン・イン・ブラッド』だ。
速い。
とにかく速い。
速すぎる。
そしてうるさい。
わたしが敬愛する名プロデューサー、リック・ルービンがプロデュースしているのでこれは良いのではないかと高を括っていたが、さすがにこれは無理だ。いくらなんでも極端すぎる。痛みを伴うほどに耳に突き刺さり、脳みそ揺らして暴れ回る。
これがまあ1曲聴くだけなら別に良いのだ。しかし曲が変わってもまた同じ地獄が始まる。これが恐怖なのである。しかも、曲に多少の違いはあっても、概ね同じである。
残念ながらわたしには、道路工事の実況録音盤にしか聴こえなかった。よくこれが聴けるものだ。感心するというか、呆れるというか。
わたしは激辛料理が好きだったりするが、しかしCoCo壱で15辛を注文する奴には、すげぇと思うのと同時に、さすがに味覚がおかしくなっているのではと逆に心配になるのに似ている。
“Among the Living” (1987)
気を取り直して、スラッシュ・メタル四天王の最後の一組、アンスラックスの3rdアルバム『アマング・ザ・リヴィング』を聴いてみる。
これは、スレイヤーに比べればずっと聴きやすい。
スレイヤーほど極端なものではなく、しかもパンクの要素やヒップホップの要素もあるおかげで、スラッシュ・メタル四天王の中でもまだ聴きやすいのだ。
異質なのも当然で、メタリカ、メガデス、スレイヤーが西海岸出身なのに対して、アンスラックスだけは東海岸のニューヨークのバンドである。しかも、他のバンドが政治や宗教や社会問題についてシリアスに歌っているのに対し、アンスラックスはマンガのキャラクターについて歌っているとも聞く。どちらかというと、軽く、ユーモアもあるバンドなのかもしれない。
そのミクスチャー的な音楽性は、後のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなどのヘヴィ・ロックの先駆的存在でもある。
ただわたしは、その体育会系的なノリがどうにも苦手だ。応援団みたいに声を張り上げて唱和したりするイメージだ。わたしの場合、ヒップホップがそもそも苦手でもある。
その辺がどうも、聴きやすく、わかりやすいけれども、残念ながらちょっとわたしには肌が合わない感じなのである。
(Goro)