No.186 ジーザス・ジョーンズ/ライト・ヒア、ライト・ナウ (1990)

Doubt
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その186
Jesus Jones – Right Here, Right Now

ジーザス・ジョーンズは人名ではない。バンド名だ。
1989年にデビューしたイギリスのバンドである。

フロントマンのマイク・エドワーズはルックスも良いけど才能も凄かった。
彼らの音楽はテクノやハウスを取り入れた、≪デジタル・ロック≫もしくはデジロックなんて呼ばれた。

でも今聴くとそこまでデジタル臭さはない。
いちばんデジタル臭いのがドラムかもしれないけど、これは人間が叩いている。幸か不幸かこういうドラマーなのだ。
マイク・エドワーズにも「頼むからもっと人間らしく叩いてくれ」と言われたという逸話がある。

この曲は彼らの2ndアルバムに先駆けて発表されたシングルで、英国のみならず、全米チャートでも2位まで上がる大ヒットとなった。

ラジオで女性が「いま革命が起きている」と喋っている
ボブ・ディランが歌っていた時代、こんなことは夢だった
なあ、生きるっていいことだな
おれはこの時を待っていたんだ

いま、ここに、僕はいる
そしてまさにいま、ここで
歴史の呪縛から世界が立ち上がるのを
僕は見ている
(written by Mike Edwards)

1989年にベルリンの壁が崩壊すると、東欧諸国が次々に民主化され、この曲がレコーディングされた1990年5月にはソビエト連邦からリトアニアが独立を宣言し、ソ連崩壊の引き金となった。
そして1991年12月にソ連は消滅し、第二次世界大戦後40年近くにわたった東西冷戦状態はひとまず終息する。

この歌はそのヨーロッパ激動期の真っ最中のことを歌ったものだろう。
いまの若者たちには実感がわかないだろうけど、米国とソ連の冷戦時代というのは、いつ核戦争が起こってもおかしくない、つまりいつ地球がまるごと焼き上がって世界の終わりになってもおかしくない状況なんだと、当時の人々、つまりわれわれは、そう認識しながら生きていたのだ。
その状況でも一生懸命働いたり、恋愛や子作りをしたりというのは、今思えば刹那的で虚無的な時代だったんだなあ、とあらためて思う。

そんな時代が終わって、これからどんな時代になるんだろう、と世界の未来への希望に満ちた視線でこの歌は歌われている。

そんなにたいして良くもなってないよなあ、なんてつい言いたくなってしまうけど、でも今の子供たちが、いつか来るかもしれない世界の終わりに怯えたり虚無的になったりしないだけでも少しは良い時代だと言えるのかもしれない。

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