No.185 ハッピー・マンデーズ/キンキー・アフロ (1990)

Pills N Thrills N Bellyaches
≪オールタイム・グレイテスト・ソング 500≫ その185
Happy Mondays – Kinky Afro

うわ。
しょうもないPVだ。

あんまりなにもできなさそうなバンドと、もっとなんにもできない美女たち。
アホっぽくて、最悪だ。

とは言えべつに今さら気づいたわけでもない。
ハッピー・マンデーズはもう初めからアホだし、くだらないのだ。ヤク中だし。

でもくだらない音楽でめいっぱい楽しんでた頃のくだらない自分を思い出すと懐かしい。アホになるのも時には悪くない。
アホになりたいときにはもってこいの音楽だった。

ハッピー・マンデーズはイギリスの工業都市マンチェスターの出身だ。1987年にデビューし、93年に解散した。

マンチェスターの平均年収は、英国全体のそれより2割少なく、生活保護受給者の数は英国平均の2倍だそうだ。
低所得者層の多い街ということと関係があるのかないのか、これまでに多くのロックバンドを輩出している。
古くはホリーズ、ビージーズから、10cc、バズコックス、ニュー・オーダー、ザ・スミス、ストーン・ローゼズ、そしてオアシスなどなど。

当時のマンチェスターは、エクスタシー(MDMA)などのドラッグと≪ハウス≫と呼ばれるダンスミュージックが大流行していた。
狂ったマンチェスターの意味で≪マッドチェスター≫と呼ばれたそのムーヴメントで、良い意味でも悪い意味でも、いやたぶん悪い意味だが、最もマッドチェスターを体現していたのが、このハッピー・マンデーズだった。

技術も無く、天性の音楽的才能なども感じられなかったが、その享楽的で破滅的な永遠のグルーヴは、できれば昨日のことも思い出したくないし、できれば明日のことも考えたくない当時のわたしにとってのささやかな熱狂であった。
マンチェスターよりもさらに退屈な、どこにでもある地方都市に住むわれわれは、夜中に部屋でヘッドホンをつけて酒を呑みながら、机上の熱狂と脳内ダンスに酔っては眠る日々だったのである。