エレファントカシマシ/悲しみの果て(1996)

ココロに花を

【ニッポンの名曲】#49
作詞・作曲:宮本浩次 編曲:宮本浩次・土方隆行

エレファントカシマシは、1988年にデビューした。

初期の「珍奇男」や「奴隷天国」などの頃は、浮世離れした無頼の徒が激烈な憤怒を激しいロックに乗せて叫び喚く、唯一無比のバンドのイメージだった。

熱狂的なファンに支持されていたけど、しかしレコードセールスには結びつかなかったのか、1994年にエピックソニーの契約が打ち切られ、所属事務所も解散してしまう。

この曲はその2年後にポニーキャニオンから発売された、それまでの作風とはガラリと趣を変えた再デビュー・シングルである。

悲しみの果てに 何があるかなんて
俺は知らない 見たこともない
ただあなたの顔が 浮かんで消えるだろう

悲しみの果てに 何があるかなんて
Oh Yeah 悲しみの果ては
素晴らしい日々を 送って行こうぜ

(悲しみの果て/作詞・作曲:宮本浩次)

歌詞だけ見れば、すでにさんざん手垢がついたような単純なワードばかりのはずなのに、宮本浩次の歌声に乗ると、その言葉の持つ本来の深みや重さ、美しさが、生々しく伝わってくる。言葉に凄味が宿り、核心を突く。
この曲のすべての言葉にわたしはビリビリと震え、勇気づけられた。

それは楽曲の総合的な素晴らしさのせいでもあるのだろうけれど、なにより、宮本浩次が常に本気の感情を漲らせた言葉でしか歌わないせいもあるだろう。
この人の歌を聴くたびに本当に感心する。感動する。
日本ロック史上の、忌野清志郎や甲本ヒロトなどと並ぶ最高のヴォーカリストのひとりだ。

初期の厭世的な言葉は影を潜め、真摯で前向きな言葉が並ぶのは、絶望から這い上がった宮本とエレカシの飛躍的な成長の証なのだろう。