【映画】『アイム・ノット・ゼア』(2007米) ★★☆☆☆

アイム・ノット・ゼア [DVD]

【音楽映画の快楽】
I’m Not There

監督:トッド・ヘインズ
主演:ケイト・ブランシェット、クリスチャン・ベール
音楽:ボブ・ディラン

『ベルベット・ゴールドマイン』のトッド・ヘインズ監督が、今度はボブ・ディランを標的にして、彼の半生を好き勝手に描いた作品。

デビュー直前のディランを黒人少年が演じ、「風に吹かれて」の頃をクリスチャン・ベールが演じ、「ライク・ア・ローリング・ストーン」の頃を女優のケイト・ブランシェットが演じるなど、6人の俳優がディランの様々な側面を演じるという変わった手法だ。

変わった手法を思いつくのはいいのだけれど、結果それが全然面白くならないというのが、この監督の痛いところである。
映像もキレイなのに、なにしろ面白くならない。

でも、ケイト・ブランシェットは素晴らしい。

そもそも女優がディランを演じるというアイデアも素晴らしいけど、なにより60年代半ばのディランを、見た目から喋り方からタバコの吸い方から、仕草から歩き方から癖まで、驚くほどそっくりに演じているのが凄い。

あの『ドント・ルック・バック』や『ノー・ディレクション・ホーム』などのドキュメンタリーで使われていた、当時のディランの記者会見や、オフショットでの映像を、一言一句そのまま再現して見せているのが面白い。

しかし、この映画の見どころはこのケイト・ブランシェットのみで、あとは〈その他のディラン〉たちや、唐突にビリー・ザ・キッド(そりゃ、ディランはビリー・ザ・キッドの映画に出ていたけれども、ビリーは演じていない)なんかがかわるがわる出てくるけれども、ただただ見る者を混乱させるだけで、面白いところはまったくない。

どうせならケイト・ブランシェットだけでやってほしかった。それならもっとスッキリして、ユーモラスで画期的な映画になっただろうに。

今作ではディランの楽曲の使用許可が下りたらしく、最初から最後までディランの曲が使用されている。そのうえ歌詞もちゃんと日本語字幕で出るので、そこは良かったかな(それにしても、よく許可したものだ)。

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