R.E.M. – Radio Free Europe
米ジョージア州で結成されたR.E.M.のデビュー・シングル。全米78位。
バーズやディランが創造したフォーク・ロックやカントリー・ロックをルーツとする、アメリカン・ロックの原点に立ち還ったようなシンプルな楽曲と、マイケル・スタイプの一度聴いたら忘れられない声がR.E.M.の魅力だった。
正直わたしは、リアルタイムのR.E.M.は、たまに聴く程度だった。主食ではなかった。
それよりももっと刺激的で、度肝を抜くような轟音ギター・ロックにシビれていた。それにくらべるとR.E.M.はやや刺激の弱い、フツーの音楽だったのだ。1980年代の終わりから、90年代前半の頃の話である。
でも、刺激にはいつか慣れるし、飽きるものだ。
あっちもこっちも轟音ギターで、さすがに飽きて来た頃、いつの間にかR.E.M.を聴くローテーションが早くなっていた。
R.E.M.の音楽は、非日常的な音楽ではない。日常の音楽だ。
料理を作ったり、掃除をしたり、ドライヴをしたり、昼寝をしながら聴くのにちょうどいい。眠れない夜に聴くのにぴったりな曲もある。ちょうど古いカントリーやブルースがそうだったように。
1990年代前半の、轟音ギター・ロックのブームは、激辛料理ブームみたいなものだったのかもしれない。
その後、もう味なんかさっぱりわからない、見た目の赤さだけを競い合うような、間違った方向へとエスカレートしていくようだったので、わたしは降りた。1990年代後半のことである。
そしてご飯と味噌汁とサバの塩焼きみたいな、R.E.M.定食を好むようになったのだ。
斬新なものも良いし、変態なものも良いけれど、「やっぱり普通がいちばん」と思うときもあるものだ。でも意外とその「普通のロック」がなかなか見つからなかったりする。
R.E.M.はそんなときに聴きたくなる、日常生活にもよく合う、普通のロックだ。
この「レディオ・フリー・ヨーロッパ」には、1981年という時代のせいか、ちょっとポスト・パンクやニュー・ウェイヴのテイストが感じられるのがまた良い。
デビュー・シングルながら、ニューヨーク・タイムス紙の「1981年の10枚のシングル」に選ばれるなど、高い評価を得た。
動画は、みんな若いし、溌剌としていてカッコいい。
ヴォーカルのマイケル・スタイプの髪の毛も、たっぷりある。