エアロスミス/ラグ・ドール(1987)

Permanent Vacation

【80年代ロックの快楽】
Aerosmith – Rag Doll

70年代末からのバンド崩壊でおよそ10年ものあいだ低迷し、肉体的にも精神的にも地獄を見たエアロスミスが、ドラッグを断ち切り、最後に縋ったのが、前年にボン・ジョヴィのアルバムでメガ・ヒットをかっとばしたプロデューサー、ブルース・フェアバーンだった。

もしかするとエアロにとっては、悪魔との契約のような覚悟だったのかもしれない。

フェアバーンのプロデュースの元で制作されたのが『パーマネント・ヴァケイション(Permanent Vacation)』で、70年代のエアロスミスに比べるとずいぶんポップでキャッチーになり、作り込まれた華やかなサウンドで、まさにMTV時代にふさわしいバンドに生まれ変わった。アルバムは全米11位まで上昇する大ヒットとなり、新たなファンを獲得した。

70年代からのエアロのファンは、この新生エアロに困惑したかもしれない。
でもわたしは、エアロが復活するとしたら、この方向性はベストの選択だったと思う。

時代に合わせたサウンドと言っても、決して80年代を席巻したパーマ頭のチャラ・メタルみたいな薄っぺらい楽曲ではないし、もともとエアロは、スティーヴンとジョーのソングライティングの才能が凡百のハード・ロックバンドの比ではないので、より彼らの資質を開花させ、エアロの特長を伸ばすスタイルが出来上がったのではないかとわたしは思う。

この曲はアルバムの中でわたしがいちばん好きな曲だ。全米17位のヒットになった。
独特のグルーヴとホーンセクションもカッコいい、ファンキーで、エレガントで、ワイルドで、ラグタイムでもある、不思議な魅力を持つ曲だ。

この新生エアロの新たなスタイルは、次作の『パンプ(Pump)』で完成を極める。
そのアルバムでエアロは、無敵になる。

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