ディープなR&Bやオリジナル曲に進化が感じられる3rdアルバム【ストーンズの60年を聴き倒す】#14

アウト・オブ・アワ・ヘッズ(UKヴァージョン)

『Out Of Our Heads』 (1965)
The Rolling Stones

1965年9月にリリースされた『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』は、ザ・ローリング・ストーンズの英国3枚目のアルバムだ。

SIDE A

  1. She Said Yeah(ラリー・ウィリアムズ)
  2. Mercy, Mercy(ドン・コヴェイ&ザ・グッドタイマーズ)
  3. Hitch Hike(マーヴィン・ゲイ)
  4. That’s How Strong My Love Is(オーティス・レディング)
  5. Good Times(サム・クック)
  6. Gotta Get Away

SIDE B

  1. Talkin’ ‘Bout You(チャック・ベリー)
  2. Cry To Me(ソロモン・バーク)
  3. Oh Baby (We Got A Good Thing Goin’)(バーバラ・リン)
  4. Heart Of Stone
  5. The Under Assistant West Coast Promotion Man
  6. I’m Free

※カッコ内はオリジナル・パフォーマー。作者に非ず。作者を知りたい方はこちら。表記なきものはジャガー/リチャーズによるオリジナル曲。

このアルバムでも当時のイギリスの慣例で、先にシングルでリリースされた曲は収録されていない。前回、前々回の記事で取り上げたシングル「ザ・ラスト・タイム」と「サティスファクション」だ。両曲はどちらも全英1位、そして後者は全米ほか世界各国のチャートでも1位の大ヒットとなり、ストーンズを世界的に大ブレイクさせることになった。このアルバムはそのブレイク直後の作品となる。全英2位のヒットとなった(1位はビートルズの『ヘルプ!』だ。クソッタレ)。

オリジナルは4曲と、前2作と割合は大きく変わっていないものの、カバーもオリジナルもそのクオリティや表現の豊かさ、音楽的な新しさなど、前2作から大きく成長した印象だ。

オリジナルの「ガッタ・ゲット・アウェイ」「アイム・フリー」は、まあ似たような曲だけどメロディが耳に残って好印象だ。そしてなんといっても「ハート・オブ・ストーン」はジャガー/リチャーズによって書かれた最初の名バラードだ。

前作の「ペイン・イン・マイ・ハート」に続いて2曲目となるオーティス・レディングのカバー「ザッツ・ハウ・ストロング・マイ・ラヴ・イズ」やサム・クックの「グッド・タイムス」のカバーも収録されているように、ストーンズのサザン・ソウルへの傾倒がみられる。「ザッツ・ハウ…」でのミックは、歌い方までオーティスの影響を強く受けた名唱だ。そして「ハート・オブ・ストーン」には、そんなサザン・ソウルのテイストを濃厚に感じる。

カバーでは最初の2曲「シー・セッド・イエー」「マーシー・マーシー」も最高だ。ひしゃげたようなサウンドと、ストーンズらしいスピード感、そしてグルーヴがカッコいい。オリジナル曲に移行する前の初期カバー曲の中でも、わたしが特に好きな曲だ。「トーキン・バウト・ユー」で聴かせるストーンズお得意の耳に突き刺さってくるような野蛮なギターソロもいい。これはブライアンかな。

今回もまたジャケットがかっこいい。米国盤の『ディッセンバーズ・チルドレン』のジャケットとしての方が知られているが、本家はこっちだ。

米国盤はジャケットも違い、曲も半分ほどが差し替えられ、「ザ・ラスト・タイム」「サティスファクション」などのシングルも収録されているが、〈#5〉の記事でお断りしたように、重複と混乱を避けるために、米国盤はこのシリーズではすべて無視することにしている。

実際には長年、米国盤のほうで主に流通してきたので、『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』と言えば下のジャケットのものがよく知られているだろうけれども、それはストーンズの60年代の曲の権利を持っているアブコレコードが米国の会社であり、米国盤を優先的に販売してきたためである。

アウト・オブ・アワ・ヘッズ(USヴァージョン)

『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』の米国盤

シングル曲は後に出てくるベスト盤などでまとめて聴いて、アルバムは渋いマニアックな曲が並ぶ、当時のストーンズの指向性がよくわかる英国盤で楽しみたいものである。

(Goro)

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