ザ・ジーザス&メリー・チェイン「アップサイド・ダウン」(1984)

21 Singles

【80年代ロックの快楽】
Jesus And Mary Chain Upside Down

うるさくて聴けたもんじゃない。
こんなものは音楽と言えない。
ただの騒音だ。
バカバカしい。

そう思うのが普通なんだろうと思う。
しかしこのイギリスの兄弟グループのデビュー曲は、その出来の良し悪しはともかくとして、結果的にその後のロックの歴史の流れを変えた最重要シングルであり、90年代英米のロックの方向性を決定付けたと思う。
エレキギターを抱えた若者たちが一斉にアンプのヴォリュームぐいっと上げ、フィードバックノイズの嵐をコントロールする術を少しずつ身につけながら、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやライドやオアシスが生まれ、アメリカにも飛び火してダイナソーJrやピクシーズやニルヴァーナを生んだ。

本当はこの曲こそ、この『国際ロック秘宝館』の1曲目を飾るにふさわしい曲だと思うのだけど、ちょっとその勇気は無かった。

わたしはもともと60~70年代のロックが好きだったので、もしこの曲に出会っていなければ、90年以降のリアルタイムのロックを積極的に聴き始めることは無かったかもしれない。
この殺伐とした、異常に完成度の低いバンドが放射する、耳をつんざくフィードバックノイズの嵐は、わたしに未来のロックをもっと聴きたいという熱狂的な気分にさせた。

普通に考えたらこれがポップソングとして成立するとは到底思えないのだけど、NMEでのシングルランキングでも2位まで上昇したということはそれなりにロック好きには受け入れられたということでもあるし、わたしもこれを前衛とかではなく「意外とポップで超カッコいい曲」と思ったものだった。
まあえらく聴きにくいポップソングではあるが、もともとロックなんてものは聴きにくいのがウリの音楽なのだ。

冒頭の4行は、ロックが誕生したその時から、エルヴィスやビートルズやローリング・ストーンズに対して当時の社会から浴びせられた罵声と同じものだ。
ロックとは本来そういうものだったのに、ロックだって商売なのでいつのまにか万人が聴けるような聴きやすいものへと変わっていったのかもしれない。
このシングルはその原点に戻った、のかどうかは知らないけど、少なくともわたしにとってはその原点を思いださせてくれたものだった。