ストーンズのカバー原曲を全発掘!【vol.4】Find Original The Rolling Stones Cover Songs

コンプリート・レコーディングス

初期のザ・ローリング・ストーンズは、米国のブルース・R&Bのカバーを中心としていた。英国の白人が米国の黒人音楽を演奏するということは当時としては画期的な試みであり、それがすなわちブリティッシュ・ロック誕生の原点となったのだ。

ストーンズがカバーしたその原曲を聴いてみるという、ロック史の原初へと遡る旅は、ルーツ・ミュージック入門にも最適と言えるし、実際わたしもそうやってその奥深い世界を知り、魅了されていったのだった。

このシリーズでは、そんなオリジナル曲を発掘し、ストーンズが録音した年代順に紹介している。

今回はその第4回目で、1966年から72年にかけてストーンズがカバーした、その原曲を発掘してみた。

オーティス・レディング
愛しすぎて(1965)
Otis Redding – I’ve Been Loving You Too Long

60年代英国のモッズたちが特に愛したレコードのひとつとしても知られる、オーティス・レディング(1941-67)の代表作『オーティス・ブルー』収録曲。オーティスの〈泣き節〉が激しく炸裂する、ドラマチックな名バラードだ。全米21位。R&Bチャート2位。

ストーンズ版は米国盤『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』に収録。

ベニー・スペルマン
フォーチュン・テラー(1962)
Benny Spellman – Fortune Teller

フロリダ州出身でニュー・オーリンズのR&Bシーンで活躍したベニー・スペルマン(1931-2011)の代表曲。アラン・トゥーサンが書いた曲だ。スペルマンは60年代半ばには引退し、ビール業界に転職した。

ストーンズ版は米国盤『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』に収録。

ザ・テンプテーションズ
マイ・ガール(1964)
The Temptations – My Girl

60年代モータウンの男性コーラスグループではわたしがいちばん好きなザ・テンプテーションズ(1960-現在)の、彼らにとって初の全米No.1となった代表曲だ。

当時モータウンの様々なアーティストたちに曲を提供して八面六臂の大活躍をしていたミラクルズのスモーキー・ロビンソンが書いた曲だ。間奏のストリングスの美しさは神がかっている。天才としか言いようがない。

ストーンズ版は米国盤『フラワーズ』に収録。

ロバート・ウィルキンス
ザッツ・ノー・ウェイ・トゥ・ゲット・アロング(1929)
Rev. Robert Wilkins – That’s No Way to Get Along

ストーンズが「放蕩むすこ Prodigal Son」というタイトルでカバーした曲の原曲。
ロバート・ウィルキンス(1896-1987)はミシシッピ州出身でメンフィスへ出て活動し、1928年に「Rollin’ Stone」でレコード・デビューし、人気を博した。1930年代後半には説教師に転身している。

ストーンズ版は『べガーズ・バンケット』に収録。

ロバート・ジョンソン
むなしき愛(1936)
Robert Johnson – Love in Vain

戦前のブルースマンの中でも特によく知られた、ロバート・ジョンソン(1911-38)の作品。クロスロード伝説や27clubの初代入部者としても知られる、ミシシッピ州出身でバカでかい魔法の手の持ち主だ。

今から90年近くも前の音楽ではあるけれども、彼の音楽からは現代のわれわれにも共感が可能な、怒りや、欲望や、あきらめや、幸福や、ユーモアや、哀しみや、絶望が聴こえてくる。
この歌の、汽車が出ていき、恋が終わる、美しくもせつない情景が心に残る。

ストーンズ版は『レット・イット・ブリード』に収録。

タンパ・レッド
ドント・ライ・トゥ・ミー(1940)
Tampa Red – Don’t Lie to Me

タンパ・レッド(1903-81)は、ジョージア州出身でシカゴで活動したブルースマンだ。

彼の独特の単弦スライド・ギター、ボトルネック奏法のテクニックなどは、後のビッグ・ビル・ブルーンジーやマディ・ウォーターズ、エルモア・ジェームスなどに影響を与えたとされている。

ストーンズ版は『メタモーフォシス』に収録。

スティーヴィー・ワンダー
アイ・ドント・ノウ・ホワイ(1968)
Stevie Wonder – I Don’t Know Why

スティーヴィー・ワンダー(1950- )の18歳のときのアルバム『フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ』からのシングルで、全米39位。しかしB面に収録されていた「マイ・シェリー・アモール」が大ヒットし、全米4位となった。

ストーンズ版は『メタモーフォシス』に収録。ストーンズのカバーの中でも5本の指に入るほど好きなカバーだ。

チャック・ベリー
リトル・クイーニー(1959)
Chuck Berry – Little Queenie

チャック・ベリー(1926-2017)が1959年に「オルモスト・グロウン」との両A面シングルとしてリリースした曲。全米80位。

ストーンズ版は『ゲット・ヤー・ヤー・ヤズ・アウト』に収録。

チャック・ベリー
レット・イット・ロック(1960)
Chuck Berry – Let it rock

チャック・ベリーの1960年のシングル「Too Pooped To Pop (Casey)」のB面に収録された曲。ちょうどこの頃、未成年誘拐・売春強要という恥ずかしい罪で逮捕されたベリー先生は一気に落ち目となり、アメリカでは奮わず64位にとどまったが、イギリスでは6位とそれまでの最高位となるヒットとなった。ブリティッシュ・ビート誕生の機運が高まりつつあった頃だ。

ストーンズ版は1971年のシングル「ブラウン・シュガー」のB面にライヴ・バージョンで収録された。

フレッド・マクダウェル
ユー・ガッタ・ムーヴ(1965)
Fred McDowell – You Gotta Move

もともとはゴスペル・ソングとして古くから歌い継がれてきたこの曲を、スローなスライド・ギターのアレンジで1965年に録音したのがミシシッピ州出身のカントリー・ブルースマン、フレッド・マクダウェル(1904-72)だった。ストーンズはこのマクダウェルのバージョンを手本にしてカバーしている。

ストーンズ版は『スティッキー・フィンガーズ』収録。

スリム・ハーポ
シェイク・ユア・ヒップス(1966)
Slim Harpo – Shake Your Hips

ルイジアナ州出身のブルースマン、スリム・ハーポ(1924-70)が66年にリリースしたアルバム『ベイビー・スクラッチ・マイ・バック』からのシングル。「ハイ・ペースで催眠術のような靴磨きのビートのダンスナンバー」と評され、チャート入りはならなかったが、長期間に渡って売れ続けた人気曲だった。

ストーンズ版は『メイン・ストリートのならず者』に収録されている。

ロバート・ジョンソン
ストップ・ブレーキング・ダウン・ブルース(1938)
Robert Johnson – Stop Breaking Down

ロバート・ジョンソンが1937年にテキサス州ダラスで行った最後のレコーディング・セッションで録音した曲。ロバジョンの曲の中では最もテンポの速い曲だ。

ストーンズ版は『メイン・ストリートのならず者』に収録されている。

以上、12曲でした。次回、vol.5もご期待ください。

(Goro)