バッファロー・スプリングフィールド『アゲイン』(1967)【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#118

Buffalo Springfield Again [Analog]

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【わたしが選ぶ!最強ロック名盤500】#118
Buffalo Springfield
“Buffalo Springfield Again” (1967)

米カリフォルニア州ロサンゼルスで結成されたバッファロー・スプリングフィールドは、スティーヴン・スティルス、ニール・ヤング、リッチ・フューレイという3人が各々ヴォーカル&ギター&ソングライターという役割を務めた、めずらしいバンドだった。

3人のソングライターたちの幅広い音楽性を武器に多彩な音楽を奏でる、いかにもこの時代を象徴するような「自由」や「個性」を尊重したイメージのバンドだが、悪く言えばメンバーがバラバラの方向を向き、それぞれのソロ作品を集めたように聴こえないこともない。

本作は1967年11月にリリースされたバッファロー・スプリングフィールドの2ndアルバムである。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 ミスター・ソウル
2 ア・チャイルズ・クレイム・トゥ・フェイム
3 エヴリデイズ
4 エクスペクティング・トゥ・フライ
5 ブルーバード

SIDE B

1 ハング・アップサイド・ダウン
2 悲しみの想い出
3 グッド・タイム・ボーイ
4 ロックン・ロール・ウーマン
5 折れた矢

ニール・ヤング作のA1でローリング・ストーンズの「サティスファクション」をパクった意識したようなギターリフで始まったかと思えば、A2はカントリー風、A3はジャズとフィードバックノイズの融合、そしてオーケストラのアレンジが美しいA4「エクスペクティング・トゥ・フライ」があるかと思えば、スティルス作のパワフルでハイ・クオリティなフォーク・ロックのA5「ブルーバード」と変化に富んで飽きさせない。そしてラストのニール・ヤング作「折れた矢」は、まるでビートルズの実験的作品のように、バラバラの曲を繋ぎ合わせたような展開が面白い、本作中最高の聴き物となっている。全体に今聴いても斬新で、モダンな仕上がりの名盤だ。

しかし、ドラッグ所持で何度も逮捕されたベースのブルース・パーマー、そしてやたらと歌いたがるドラムのデューイ・マーチンを含め、5人の仲はどんどん険悪化し、本作の制作中にはほとんどバンドは崩壊していたようなものだった。とくにスティーヴン・スティルスとニール・ヤングは、互いにギターを投げ合うほど激しい喧嘩を繰り広げたという。どちらも、自分が主導でアルバムをプロデュースしたがり、対立したのだ。

その後はへそを曲げたヤングが徐々にライヴにも来なくなり、パーマーはバンドに興味を失い、フューレイもドラッグの不法所持で捕まり、スティルスは逃亡した。レコード会社との契約を履行するため未発表曲を寄せ集めてなんとか3rdアルバムをリリースしたものの、結局は実質わずか2年の活動期間で解散した。

それにしても、バンド崩壊の一番の原因がスティルスとヤングの主導権争いによる対立だったにもかかわらず、その2年後にはクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングとして、よせばいいのにまた2人は同じグループで活動する。そして時代の象徴となるほどの大成功を収めたそのスーパーグループでも、案の定スティルスとヤングは対立し、またしても解散への道を歩む。

さらにその5年後に今度はなんと二人で「スティルス=ヤング・バンド」と名乗り、アルバム『太陽への旅路』をリリースした。アルバムはヒットし、ツアーも行われたが、途中でヤングから電報「もうやめる」と連絡があり、残りの日程はスティルスのソロツアーとなった。

いったいなんなんだろう、この二人は。
こういうのも”腐れ縁”と言うのだろうか。

2000年にニール・ヤングはタイトルもそのものズバリ「バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン」という曲を発表した。

昔、ロックンロールバンドでプレイした
解散したのは飽きちゃったからだ
誰が悪いわけでも無かった

もう一度連中とプレイして、みんなを興奮させてみたい
今なら僕らは培ってきたものを聴かせられるはずだけど
僕はあの頃のようにただ楽しみのために演奏したいんだ

バッファロー・スプリングフィールドをもう一度
(written by Neil Young)

もうやめとけ、とわたしは思ったものだった。

↓ スティーヴン・スティルスのハイ・クオリティなフォーク・ロック「ブルーバード」。

↓ アルバムのラストを飾るニール・ヤングの傑作「折れた矢」。フリッパーズ・ギターの「ドルフィン・ソング」の元ネタがこれ。

(Goro)