【映画】『青春デンデケデケデケ』(1992日本) ★★★★☆

青春デンデケデケデケ デラックス版 [DVD]

【音楽映画の快楽】
『青春デンデケデケデケ』

監督:大林宣彦
主演:林泰文、大森嘉之、浅野忠信、他

「ロックはいつも青春のシンボルだ」というナレーションで始まるこの映画は、1965年の香川県の田舎町に住む高校1年生男子の主人公が、ラジオから「雷鳴のように」デンデケデケデケと流れて来たベンチャーズの「パイプライン」に衝撃を受け、友達を誘ってバンドを組むところから始まる。
勧誘の決め台詞は、「これを逃したら一生女にモテんぞ。おまえ、女無しで生涯を終えるんぞ!」という強力なものだ。

町工場でバイトをして楽器を揃えたものの、練習を始めればやかましいと追い立てられ、練習できる場所を求めて彷徨いながら河原や山奥まで行ってキャンプを張ったりと、幾多の苦難を乗り越えると、彼らの熱意を気に入った教師が軽音楽部を新設してくれて校内で練習できるようになり、女子たちの注目も浴び、甘酸っぱい恋も芽生え、そして3年の文化祭がやってきて、彼らの最初で最後の晴れ舞台というクライマックスを迎える。

クライマックスもいいけれど、彼らがバイトをしてやっと手に入れた憧れのグヤトーンのギターを大事に抱きながら眠ったり、注文したドラムセットがオート三輪に積まれて家に届くシーンなんかにわたしは妙にグッと来た。彼らの人生が変わった瞬間だと勝手に想像したからかな。

この作品は、先日亡くなった大林宣彦の監督作。原作は直木賞を受賞した芦原すなおの自伝的小説だ。

リアリティにこだわって、原作通りの香川県観音寺市で撮影され、言葉ももちろん観音寺弁で(なに言ってるかわからないときもある)、自然光の一発撮りで撮影されている。

なにかに夢中になっている人っていうのは、それだけでずっと見ていられる。
物語の楽しさと共に、美しい田舎町の澄んだ空気が伝わってくるような、清々しい気持ちになる、青春映画の傑作だ。

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