ジェネシス/フォロー・ユー・フォロー・ミー(1978)

And Then There Were Three [12 inch Analog]

【70年代ロックの快楽】
Genesis – Follow You Follow Me

やっぱり「懐かしい」は最強だな。

この年になってくると、若い頃に聴いた音楽を20年ぶり、30年ぶりに聴いたりすると、「好き」とか「嫌い」とか、「良い」とか「悪い」とかよりも、「懐かしい」という感情が上回る。すべてをチャラにしてしまう、圧倒的に強力な感情だ。

プログレ様を聴く人は賢い人ばかりだと聞くが、わたしは頭が悪いのでプログレ様は反吐が出るほど苦手だった。
プログレ様時代のジェネシスは聴いていなかったけど、この曲だけはたまたま持っていた廉価コンピレーションCDに入っていたので、よく聴いた。まあ、好きとまでは言わないけれども、よく聴いた。

もちろん、今は「懐かしい」だけなので、楽しく聴ける。

1975年にヴォーカルのピーター・ガブリエルが脱退し、77年にギターのスティーヴ・ハケットが脱退するとついにジェネシスは3人になってしまう。

翌78年の寂しげなタイトルのアルバム『そして3人が残った(…And Then There Were Three…)』はしかし、ジェネシスにとっての最大の転機となる。

どういうわけかピーター・ガブリエルそっくりの声を持っていたドラムのフィル・コリンズがヴォーカルも担当し、マイク・ラザフォードがギターとベースの両方を担当するという人手不足が顕著なバンドとなりながら、ついに食えないプログレ様を捨てて、ポップスに転向した。

そしてこのフワフワのシュークリームみたいな甘いラヴソング「フォロー・ユー・フォローミー」をシングルカットすると、ジェネシスのキャリア中最大のヒットとなった(全英7位、全米23位)。ここから新生ジェネシスの快進撃が始まる。

80年代に入るとアメリカでも支持を得、イギリスよりもむしろアメリカでシングル・ヒットを連発すると、1986年には「インヴィジブル・タッチ」でついに全米1位に輝く。

70年代のプログレバンド様たちが80年代になると食えなくなったのか続々とポップスやAORへと転向したが、そんな転びプログレたちの扉を開いたのがジェネシスだったのだろう。

ピーター・ガブリエルも脱退して大成功し、し脱退されたジェネシスのほうも大成功し、さらにはフィル・コリンズがソロでも大成功と、80年代はまさにジェネシス・ファミリーがポップス・シーンを席巻したのだった。