ピーター・ガブリエル&ケイト・ブッシュ/ドント・ギヴ・アップ(1986)

SO [12 inch Analog]

【コラボの快楽】
Peter Gabriel – Don’t Give Up (ft. Kate Bush)

5thアルバム『So』収録の、ケイト・ブッシュをft.した美しい曲。このシングルも全英9位のヒットになった。

PVではピーター・ガブリエルとケイト・ブッシュがずっと抱き合ったままという、デュエット曲としては密着度が史上1位のPVである。

ピーター・ガブリエルが歌う歌詞は、誇りも居場所も失い、「まさか自分の身に降りかかるなんて。こんな状況は耐えられない」と人生に絶望した男の言葉だ。

それに対してケイト・ブッシュが優しい友(または家族)の立場から「あきらめないで、まだ私たちがいる。あなたの居場所は必ずある。少し休むといいわ。あきらめないで、きっとうまくいくから」と慰める。

今、あらためてこの曲を聴くと、わたしは数年前に20年も務めた職を突然失った日のことを思い出す。

そもそも男なんて仕事を取ったら何も残らないようなものだ。
わたしも、あまりにも人生のすべてを仕事に捧げ過ぎていた。その人生のすべてを突然失い、さらに戦友のような仲間たちとの絆を一瞬にして断ち切られると、まるですべての人類が死に絶え、地球が滅亡したぐらいの絶望感と、おそろしいまでの孤独がわたしを襲ったものだ。

でもちゃんと周囲を見れば、地球は滅亡なんてしていないし、周囲には温かく優しく支えてくれる家族や友人たちがいた。
なんだかものすごく長いあいだ閉め切ったままだった部屋のカーテンを久しぶりに開けたような気分だった。
カーテンさえ開ければ、そこに優しい人々がいて、にぎやかな地球が存在するのだから、孤独でも絶望でもなんでもなかったことに気づく。あきらめる必要なんてないのだ。

まあ本音を言うと、絶望的な気持ちになったときには、こんなふうに美しいお姉さまにハグされて慰めてもらえるといちばんいいのだけれど。

ていう男の願望そのもののPVだ。

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