はじめてのトム・ウェイツ【必聴名曲5選】5 Tom Waits Songs to Listen to First

ユーズド・ソングス:ザ・ベスト・オブ1973-1980(スーパー・ファンタスティック・ベスト2009)

トム・ウェイツの音楽を昼間に聴くことはあまりない。彼の音楽を聴くなら、やっぱり夜に限る。
しかも、なにかをしながらではなくて、独りで、音楽だけに没入して聴きたい。もちろん、なんらかのアルコール類はあったほうがいいけれども。

若い頃のトムの声は、いかにも孤独な男の声だ。

にぎやかで幸福そうな世間からドロップアウトして、夜の街の喧騒に紛れてかろうじて生きている男のような、孤独なつぶやきだ。

彼の声を聴いていると、われわれはもともとみんな独りなんだとあらためて思い出す。これまでの人生で出会った様々な人のことを思い出したりもする。みんな、どこでどうしてるのだろうか、などと。わたしの知る由もなく、すでにこの世にいない人もいるだろうな。

未来を想うことは、この年になるともうあまり楽しくない。トム・ウェイツの音楽は、わたしを過去へと誘い、なにか大切な感情を思い出すような気分にさせてくれる。

初めてトム・ウェイツを聴く人にも、やはり夜に聴いてほしいと思う。昼間に聴くもんじゃない、と言ったら失礼だけれど、夜のほうが彼の音楽は一層心に沁みる。できれば独りの部屋で、あるいは車の中で。

以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきトム・ウェイツの至極の名曲5選です。

オール’55(1973)
Ol’ ’55

トム・ウェイツの1stシングル。「オール55」とは、1955年型の古い車という意味で、実際にトム・ウェイツが乗っていた、55年型ビュイック・ロードマスターのことだそうだ。
イーグルスがカバーしたこともあって、トムの曲では最もよく知られた曲のひとつだ。

「オール55」の過去記事はこちら

マーサ(1973)
Martha

名盤1st『クロージング・タイム』に収録された最も美しい曲のひとつ。
初老らしき男が昔の恋人に40年ぶりに長距離電話をかけ、それぞれ結婚して家族を持ったことを喜び合い、昔のことを語り合いながら、「一緒になれる運命ではなかったけど、それでもおれは君を愛してる」と歌う歌だ。ロマンティックを通り越して、その想いの重さに震える。

「マーサ」の過去記事はこちら

グレープフルーツ・ムーン(1973)
Grapefruit Moon

『クロージング・タイム』収録曲。トム・ウェイツの曲の中で、わたしがいちばん最初に惚れこんだ曲がこれだった。

夜のお店もみんなシャッターを下ろし、隣人たちが眠りに就いた後、真夜中に窓から満月でも見ながら聴きたい名曲だ。

「グレープフルーツ・ムーン」の過去記事はこちら

土曜日の夜(1974)
(Looking for) The Heart of Saturday Night

2ndアルバム『土曜日の夜(The Heart of Saturday Night)』のタイトル曲。ジャズ・ミュージシャンたちを起用し、よりジャズ色の強いアルバムとなった。土曜の夜に恋の相手を探して夜の街に車を走らせる、孤独な男の歌だ。

「土曜日の夜」の過去記事はこちら

トム・トラバーツ・ブルース(1976)
Tom Traubert’s Blues 

4枚目のアルバム『スモール・チェンジ(Small Change)』のオープニング・トラック。
「土曜日の夜」から2年しか経っていないのに、この声のつぶれ具合は凄い。いったい何があったんだろう。それでも、この美しい曲にこれ以上ふさわしい「悪声」はないと思えるから不思議なものだ。
日本ではなぜか、2009年のフジテレビのドラマ『不毛地帯』のエンディング曲に使われた。

「トム・トラバーツ・ブルース」の過去記事はこちら

選んだ5曲がぶっ続けで聴けるプレイリストを作成しましたので、ご利用ください。

♪プレイリスト⇒ はじめてのトム・ウェイツ【必聴名曲5選】はこちら

入門用にトム・ウェイツのアルバムを最初に聴くなら、ベスト盤より名盤1st『クロージング・タイム』がお薦め。トム・ウェイツの最高傑作であり、トムへの入り口としてこれ以上のものは無いと思います。

(by goro)

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