名盤100選 60 ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズ『ザ・グッド・サン』(1990)

ザ・グッド・サン(コレクターズ・エディション)(リマスター)(DVD付)

今年最初の更新です。
日本の皆さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新年初更新は地味にニック・ケイヴでいくことにしよう。
暗い初更新だなあ、と思われなければいいけど。
いやまあいいか。
暗いということがべつにネガティヴなことだとは限らない。

このブログに書くために、昔好きだったアルバムなどを引っ張り出してきて、何年ぶりかに聴いてみる、ということをちょくちょくすることになる。
でもそうすると「あれー、思ってたより良くないなあ」と思うことも多い。もちろんそういうものはブログに取り上げるのはやめて、また別のものを探すことになる。

ニック・ケイヴの90年物『ザ・グッド・サン』は、その逆である。
ブログで取り上げようと思ってこのあいだ何年ぶりかに聴いて、「えっ、こんなに良かったっけ」とあらためて見直した。
わたしも若い頃はもっと勢い、
だとか轟音、
だとか派手さ、
といったものに惹かれやすかったのだけど、このニック・ケイヴにはそのどれにもない。
でも良い音楽とは勢いや轟音や派手な見かけだけではないということがこの年になってわかってくると、ニック・ケイヴのようなただひたすら真摯な音楽の良さが20代の頃よりもっとよくわかるようになったと思う。
真摯に魂を込めて創られた音楽であるから胸を打つのであって、それが明るかろうと暗かろうとそんなことはどうでもよろしい。
これはどうやら「超」のつく名盤のようである。

オーストラリア人のニック・ケイヴは、80年代前半には暗黒前衛ニューウェーヴ系のバンド「ザ・バースディ・パーティ」のメンバーとして、原始的なリズムとノイズと咆哮と打撃音と狂乱の、それはもう恐い恐い音楽をやっていたのだったが、84年からソロでバッド・シーズと一緒にやるようになってからは、メロディアスでポップな音楽もやるようになった。
本当はこういう歌心あふれる音楽がやりたかったのだろう。ファースト・アルバムにはエルヴィスの「イン・ザ・ゲットー」のカバーなんかも入っている。
作風の基本はメロディアスでポップなのだけど、なにしろその低い声は、地獄の使者がディナーの招待を告げに来たようであり、その風貌は、その地獄の使者を乗せてきた、たてがみをなびかせる美しい馬のようだ(でもカッコ良いが)。
そのような男が歌うと、シンプルでプリミティブでありながらも、どうしたって世にも個性的な音楽になってしまうのだ。

わたしは92年頃に名古屋のクアトロで彼らのライヴを観たが、モニターに片足をかけ、アクションも交えて熱唱する姿は西城秀樹のようでもあり、このカッコ良さならたしかにこれだけ女の客が多いのも納得できるなあと思ったものだ。
ニック・ケイヴの音楽は個性的だ。でもたぶん本人はただシンプルで良い歌を真面目に魂をこめて歌っているだけのつもりなのだろうと思う。
ただ彼の生まれもっての圧倒的な個性のパワーが、その歌を比べようもないほど個性的な音楽にしてしまう。

このアルバムは素晴らしく美しい。
本当に美しいものには光だけでなく影の部分もあるものだし、磨き上げられた部分だけではなくざらざらとしたリアルな手触りの部分もあるものだ。このアルバムにはそのすべてが備わっている。
これは「超」のつく名盤なのである。

昨日は恒例の新年会でした。友人たちがたくさん集まって、明け方まで飲み明かした。
そこでHotDogs雄介氏が言ってたのだけど、彼の姪にあたる弱冠20歳の女の子がこのブログを読んでいるという。
驚きましたね。
そのうち自分の娘なんかもこのブログを読んだりする日が来るのかな、などと考えたことはあるけど、そんなことはもうずっとずっと先の、未来の話だと思っていた。
でももう実際にわれわれの娘・息子に当たる世代が読んでいるんですね。
なんかマズいことを書いてこなかっただろうかとあれこれ考えてみると、まあたしかに下半身的なこともエロス的なことも非常識なこともくだらないことも書いてるなあと思い冷や汗が出そうになる。だからちょっと意識してしまい、今回はアーティストと音楽についていつになく真面目に書いてしまったかもしれない。

なんて、それは関係ないのだけど、まあそういう娘みたいな女の子が読んでいるというのも嬉しいので、今年はもっともっとブログをたくさん更新しようと思いました。
そしてくだらないことや非常識なことや若い女の子が読むに耐えないような暗黒なことも山ほど書こうと思います。
乞うご期待。

Nick Cave’s Fabulous 5 Songs

1.Straight To You (1992)
2.Foi Na Cruz (1990)
3.The Weeping Song (1990)
4.The Ship Song (1990)
5.Helpless (1989)

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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コメント

  1. ゴロー より:

    よくご存知で
    PJハーヴェイとデュエットしてましたね。
    谷村新司と小川知子みたいな、濃いィ感じのやつでした。

    そのあとでついにデビュー当時からファンだったカイリー・ミノーグともデュエットしましたよ。
    嬉しかったでしょうねえ(笑)。

  2. フェイク・アニ より:

    迎春
    ニック・ケイブってさ、昔PJハーヴェイとデュエットしてなかった?
    なんか世紀末の銀恋みたいな曲?

    そういえば昔、ニック・ケイブとジュリアン・コープ(笑)を何だか聞きまくってた時期が1ヶ月位あったなぁ。