マニック・ストリート・プリーチャーズ/輝ける世代のために(1998)

THIS IS MY TRUTH, TELL ME YOURS

【90年代ロックの快楽】
Manic Street Preachers – If You Tolerate This Your Children Will Be Next

マニックスの5枚目のアルバム『ディス・イズ・マイ・トゥルース・テル・ミー・ユアーズ(This Is My Truth Tell Me Yours)』からのシングルで、彼らにとって初めての全英1位となった記念すべき大ヒット曲。

原題の”If You Tolerate This Your Children Will Be Next”は、1930年代のスペイン内戦で、ナチスなどから支援を受けたフランシスコ・フランコ率いる反乱軍の爆撃によって殺された子供の写真を使用した、反ファシズムのポスターに使用された警告を引用したものだ。その意味は「こんなことを許せば、次はあなたの子供がこうなります」

この曲はそんな警句に触発された曲で、今の時代の不条理や悪事に対してもなにも行動を起こさなければそれを容認したことになり、次はわれわれの子供たちが被害者になるんだと、無関心でいることの危険さ、罪の重さについて歌った歌だ。

たとえば今なら、軍がクーデターによって自国を制圧し、反対する国民を虐殺しているニュースが連日報道されている。
また、少数民族に対する戦慄を覚えるようなジェノサイドを行ったり、国民の自由を弾圧し、恐怖で支配し、さらには、近隣の豊かな国への侵略も常に機会を窺っている。

そんな非人道的な蛮行を見て見ぬふりをし、沈黙し、五輪だの友好だのと言ってるのは容認しているのと同じで、われわれも同罪だということだろう。
そして、われわれが沈黙しているがために、次に自由を失い、暴力と恐怖に支配されるのはわれわれの子供たちなのだ。

この曲の大ヒットも追い風になり、アルバム『ディス・イズ・マイ・トゥルース・テル・ミー・ユアーズ』も、ついに全英1位を獲得した。

デビューからちょうど10年目、ビッグマウスからの挫折、批判や嘲笑の中からスタートし、バンドの顔だったリッチーを失い、苦難と波瀾を乗り越えながら、イメージとは真逆の地味な努力を重ねて掴んだ英国ナンバー1、国民的バンドの称号は、真に価値ある栄光だった。

デビュー当時はただの誇大妄想狂のクソガキのたわ言と思われていた”You Love Us”という言葉が、10年の時を経て、遂に現実となった瞬間だった。