パティ・スミス/ロックンロール・ニガー(1978)

Easter

【NYパンクの快楽】
Patti Smith – Rock N Roll Nigger

パティ・スミスの3rdアルバム『イースター(Easter)』収録曲。
英語圏の地域では禁止用語の代表格のひとつで、黒人に対する差別的なワード「Nigger」を連呼する激烈な曲だ。

あの子は黒い羊
あの子は娼婦
あの子はロックンロール・ニガー

ジミ・ヘンドリクスもニガーだった
キリストもおばあちゃんも
ジャクソン・ポロックもニガーだった
ニガー、ニガー、ニガー、ニガー

この社会の外側で
彼らは私を待っている

(written by Patti Smith)

パティ・スミスは「ニガー」という言葉を、常識を超える突然変異的な超人であり、社会においては異端であり、しかし圧倒的にパワフルで強い存在として再定義して使用しているらしい。

ちなみに「ジャクソン・ポロック」は20世紀前半にニューヨークで活動した、キャンバスを床に置いて絵の具をブワーッとたらして絵を描いた超有名な前衛画家である。「おばあちゃん(Grandma)」というのはキリストのおばあちゃん、聖アンナのことなのか、もしくはパティ・スミスのおばあちゃんのことなのか。

また彼女は、子供の頃から出身地のシカゴで黒人と一緒に育った自分には「Nigger」という言葉には差別的な意味がまったくなく日常的にリスペクトを込めて使っていた言葉だ、と語っている。そして「ユーモアであることも理解してほしい」とも語っている。

わたしは、パンクの女王の面目躍如と言えるこの痛快な曲が大好きだ。

そもそもこんな歌を歌っても許されるのはロック界広しと言えども、パティ・スミスぐらいしかいないだろう。
それは彼女の、言葉に対する深い洞察と知性、理不尽な差別に対する憎悪、多様性への理解、そしてユーモアの尊さを誰もがわかっているからだろう。

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