トーキング・ヘッズ/ワンス・イン・ア・ライフタイム(1980)

リメイン・イン・ライト<SHM-CD>

【80年代ロックの快楽】
Talking Heads – Once in a Lifetime

トーキング・ヘッズの4枚目のアルバム『リメイン・イン・ライト』からのシングル。
アフリカ音楽とロックをファンクのスタイルで融合させた、と言われたこのアルバムは、まさに「普通のロックお断り」という状況だった80年代の幕開けにふさわしい、ロックにまたひとつ新しい路線を敷いた画期的なレコードだった。

とは言え「アフリカ音楽」がなにを意味するのか、アフリカのポップスなのか、アフリカの民族音楽なのか、そもそもアフリカのどの辺りの音楽なのか、その辺りのことはよくわからない。
あの広大なアフリカ大陸の音楽がそんな簡単に一括りに出来るはずもないので、「イメージとしてのアフリカ風ワールド・ミュージック」ということなのかもしれない。

それにしても、ロックにワールド・ミュージック的要素を持ち込むと軒並み失敗するものだが、これは数少ない成功例と言えるだろう。

ブライアン・イーノという人は、電子楽器をうまく使いこなす人だ。
この時代はシンセサイザーや電子楽器の新製品で耳新しい音を派手に鳴らせば食いつきがよかった時代なので、競ってアレンジの中心に持ち込まれたものだけれど、このイーノという人はシンセサイザーや電子楽器をとても節度のある使い方で、曲にうまく馴染ます名人のような職人であった。おかげでロキシー・ミュージックもデヴィッド・ボウイもトーキング・ヘッズもU2も、新しい響きを導入しつつ、バカっぽくならずに済んだのだ。

このあまりウェットな感情のない、体を刺激するリズムが快い乾いた音楽を、わたしはあまりなにも考えたくないときに好んで聴く。
くよくよじめじめした気分がすーっと抜けて、掃除が行き届いて埃も湿気もないログハウスで過ごすような、爽やかな気分になるものだ。