名盤100選 90 フェアポート・コンヴェンション『リージ&リーフ』(1969)

リージ・アンド・リーフ+2

いよいよ残すところあと10タイトル、ともなってくると選ぶタイトルも慎重になってくるが、同じようなものばかりでもつまらないし、できるだけいろいろなジャンル、いろんなタイプのアーティストのものを、などと、べつに誰に求められているわけでもない気遣いをしたりする。

フェアポート・コンヴェンションはエレクトリック・トラッド・バンドなどと呼ばれる、英国の民謡の要素をロックと融合させた音楽である。
ロックバンドにフィドルやマンドリンも入り、民謡の泥臭さやもの哀しい郷愁と、当時最先端のフォーク・ロック的技巧が一体となって、生々しく魅力的なサウンドを聴かせる。こういうジャンルのものをあまり聴いたことがなかったわたしにとっては鮮烈な響きだった。

同時代の、アメリカのフォーク・ロック・バンドがカントリーを探求し始めたのと機を同じくしており、日本で言えば赤い鳥なども、地方の民謡をフォークグループとして美しく演奏したが、イギリスはもっとプログレッシヴロック的な要素も注入してきた感じだ。
赤い鳥の山本潤子の素晴らしい声にも匹敵する歌姫、サンディ・デニーのヴォーカルも良い。世俗的な可愛らしさなどとは違う、まるで巫女が祈りを捧げるような神々しい歌声である。

やってることがクソ真面目すぎるのもあるだろうが、たぶんあまり売れていないか、日本では全然人気が無いと思われる。
日本版のWikipediaで調べてみても、たった1行、『フェアポート・コンヴェンション(1967-)はイギリスのフォーク・ロック・バンド。』と書いてあり、あとはメンバーの名前とディスコグラフィが出ているだけである。
だからほとんどなにもわからない。わかっているのはこのアルバムは4枚目のアルバムで1969年に発表されたということだけだ。

わたしがこのアルバムを入手したのは今から7年前、フェアポート・コンヴェンションの何枚かのオリジナルアルバムが紙ジャケの国内盤で発売されたときに、名古屋パルコ内のタワーレコードでコーナー展開されていたのをたまたま見かけたからだった。
わたしはその時点ではフェアポート・コンヴェンションというバンドのことなどまったく知らなかった。名前すら聴いたことなかったし、英国エレクトリック・トラッドなるジャンルがあることすら知らなかったのだ。
なのにわたしがこのCDをその場で買ったのは、その紙ジャケットの印刷の美しい質感や、手に持ったときの実にいい感じの重さ、そしてタワレコ担当者の熱意がつたわってくるコメントPOPの文章に惹かれたからだった。

あの頃までは、あんな風にCDを買い、未知の音楽と出会っていたのだ。
お金がもう、いっぱいかかったが、でも、シアワセな時代だったのかもしれない。

そのパルコのタワレコは今もまだあるけど、世の中からは今やCDショップがどんどんなくなっていく。
街のCDショップ、昔ならレコード屋さんはもうほとんどなくなってしまった。外資系の大手すら、閉店する店舗が続出している。レンタル業界も年々CDの売り上げは減っていく一方だ。
さびしいことだが、これも時代の流れであり、経済原則に則って、変わっていくものは変わっていくのである。

買い物で休日を一日つぶすシアワセや、衝動買いでムダ使いして後悔するシアワセや、何も買わずに店内をブラブラして終わるムダな時間のシアワセや、あるいはショップで安給料で働くシアワセや、小さなショップを細々と経営するシアワセも、時代の移り変わりとともにもう消えてなくなろうとしている。

ノスタルジックに考えればさびしいことだけど、人も変わっていくのだから、世の中が変わっていくのはあたりまえのこと。
それでも音楽だけは決してなくならないので、大丈夫。
シアワセ、シアワセ。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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