偉大なる発明”ジャングル・ビート” 〜ボ・ディドリー『ボ・ディドリー』(1958)【最強ロック名盤500】#62

ボ・ディドリー

⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#62
Bo Diddley

“Bo Diddley” (1958)

ミシシッピ州出身のボ・ディドリーもまた、ロックンロール誕生の聖なる年、1955年にシカゴのチェス・レコードからデビューした
。デビュー・シングルは本作の冒頭に収録されている、自身の名前をそのままタイトルにした「ボ・ディドリー」という曲だった。

“ボ・ビート”または”ジャングル・ビート”と呼ばれる、ケツがムズムズしてくるような独創的なビートを発明した彼は、ちょうどブルースとロックンロールの橋渡しのような役割を果たした。

ボ・ビートの基本編成はエレキギターとスネアとマラカスだ。曲によって、ピアノが加わったり、ベースが加わったりする。バディ・ホリーの「ノット・フェイド・アウェイ」やU2の「デザイアー」などもこのジャングル・ビートを拝借して書かれている。

本作はデビューからおよそ3年の間に発表したシングルを中心に収録した、1958年6月にリリースされたボ・ディドリーの1stアルバムだ。カッコ内は米R&Bチャートの最高順位だ。

【収録曲】

SIDE A

1 ボ・ディドリー (1位)
2 アイム・ア・マン
3 ブリング・イット・トゥ・ジェローム
4 ビフォー・ユー・アキューズ・ミー
5 ヘイ・ボ・ディドリー
6 ディアレスト・ダーリン

SIDE B

1 ハッシュ・ユア・マウス
2 セイ・ボスマン
3 ディドリー・ダディ (11位)
4 ディディ・ワ・ディディ
5 フー・ドゥ・ユー・ラヴ
6 プリティ・シング (4位)

1stシングル「ボ・ディドリー」は、米R&Bチャートでいきなり1位を獲得するという鮮烈なデビューとなった。このジャングル・ビートがよほど衝撃的だったのだろう。
ただし歌詞は「ボ・ディドリーは赤ちゃんにダイヤモンドの指輪を買った」とか、「ボ・ディドリーが乳母ヤギを買った」とか「モジョがおれの家に来て、赤ちゃんを連れ去っていく」とか、ちょっとなに言ってるかわからない、という感じだ。

2ndシングル「ディドリー・ダディ」がR&Bチャート11位、3rdシングル「プリティ・シング」も同4位とヒットした。チャートには入らなかったが「フー・ドゥ・ユー・ラヴ」は彼の代表曲として最もよく知られている曲のひとつだ。

「アイム・ア・マン」もよく知られた曲だ。もともとマディ・ウォーターズの「フーチー・クーチー・マン」を手本にして書かれた曲だが、さらにこの「アイム・ア・マン」のアンサー・ソングとしてマディ・ウォーターズは「マニッシュ・ボーイ」を書いている。

シンプルでストレートなチャック・ベリー風のロックンロールだけでなく、さらに攻撃的でギザギザで野蛮なジャングル・ビートをボ・ディドリーが発明してくれたのもロックンロールにとって幸福だった。おかげでさらにロックの世界が深みを増した。

わたしはボ・ディドリーの名前と曲をローリング・ストーズによるカバーで知ったが、ストーンズ・ファンにとっては、マディ・ウォーターズやチャック・ベリーと並んで親しみの深い、祖父のひとりのような存在だろう。

ボ・ディドリーは2008年に79歳でこの世を去った。
チャック・ベリーやマディ・ウォーターズほど有名ではないし、最近はあまり聴かれないのかもしれないけど、彼もまた偉大なるロックンロール・オリジネイターのひとりであることだけは忘れられてほしくないなあと思う。


↓ エド・サリヴァン・ショーで披露されたデビュー・シングルの「ボ・ディドリー」。ジャングル・ビートによる代表作だ。クールなパフォーマンスがカッコいい。

↓ ボ・ディドリーの代表曲としてよく知られている「フー・ドゥ・ユー・ラヴ」。

(Goro)

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