ピクシーズ/ヒア・カムズ・ユア・マン(1989)

ドリトル

【80年代ロックの快楽】
Pixies – Here Comes Your Man

ボストンのバンド、ピクシーズが80年代最後の年に発表した、名盤『ドリトル』からのシングル。

イギリスの音楽誌NMEの年間アルバムの読者投票で1位となったのがストーン・ローゼスの『石と薔薇』、そして2位がこのピクシーズの『ドリトル』だったのは象徴的だ。

まさにこの英米のインディーズ・シーンを代表する2組の登場によって、良くも悪くもMTVが支配した80年代ロックは終わりを告げ、再びロックのゴツゴツした感触(岩だけに)を取り戻し、大人が眉を顰めるような騒々しい90年代ロックが始まったと言える。
ロックシーンの流れを、怒涛の流れへと変えてしまうほどの影響力だった。


ピクシーズからは≪オールタイム・グレイテスト・ソング500≫には2曲選んだが、「ディベイサー」と「ボーン・マシーン」という、どちらもブチ切れ絶叫系の代表曲だった。
しかし彼らにはポップでユーモラスな脱力系の楽曲もあり、それもまた魅力的だ。

ピクシーズを結成するために、デブのブラック・フランシスとジョーイ・サンティアゴは、ベーシストを新聞広告で募集した。
そのときの募集記事が、「ハスカー・デュとピーター・ポール&マリーを合わせたバンド」だったそうだ。

ハードコア・パンクのハスカーデュと60年代のフォーク・グループを並べたのは、まさに言い得て妙で、後に創造する彼らの音楽をものすごくうまく表現していて感心するほどだ。
グループを結成する前から、しっかりとした音楽のヴィジョンがあったということなのだろう。
そしてこの記事に応募して、採用されたのがベーシストのキム・ディールだった。


この「ヒア・カムズ・ユア・マン」は、そのピーター・ポール&マリーが顔を覗かせたような、ポップな脱力系ロックである。

米モダンロックチャートで3位と、彼らにとって最高位を記録した曲だ。

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