T.レックス【名曲ベストテン】T.Rex Greatest 10 Songs

20センチュリー・ボーイ

70年代前半のイギリスのグラム・ロック・ムーヴメントの立役者の1組として、T.レックスは絶大な人気を誇った。

60年代末頃から、ロックは成熟の域に達し、プログレやハード・ロックの登場で、さらに芸術性の追求や高度な演奏技術による複雑化や難解の域へと変遷していったが、新たな世代の少年少女たちがそれとはまったく逆の、T.レックスなど、単純さやカッコ良さを追求したグラム・ロックに夢中になったのは必然だっただろう。

日本でも人気が高く、アルバム『電気の武者(Electric Warrior)』がオリコンチャート19位と大ヒットし、72年、73年に来日し、日本武道館でも3回公演しているほどだ。

T.レックスの音楽は中身のないがらんどうのロックだ。歌詞にもほぼ意味はない。
中身がないというのを「バカにしてる」と思う方はまだまだ人生経験が足りないな。
「空虚の美」というものだってあるのだ。

理屈もない、意味もない、純粋に表面的なカッコ良さが、T.レックスの神髄である。
まあ、T.レックスをそんな理屈で語ること自体がナンセンスなのだろうけど。

ここでは、久しぶりに聴いてもやっぱりがらんどうで空虚でカッコいい、T.レックスの至極の名曲ベストテンを選んでみました。

10位 コズミック・ダンサー(1971)
Cosmic Dancer

songwriter : Marc Bolan

電気の武者+8

2人組のティラノサウルス・レックスがあまりパッとせず、4人組のT.レックスに変わって再スタートを切ると、2枚目のアルバム『電気の武者(Electric Warrior)』で大ブレイクする。この曲はそのアルバムの収録曲だ。

T.レックスには『ブギーのアイドル』という邦題が付いたアルバムもあるほどブギーの印象が強いが、ファンにはこういうクソみたいな超単純だけどなぜかメロディが心に残るスロー・ナンバーがたまらなかったりする。

プロデューサーのトニー・ヴィスコンティによるストリングスのアレンジも素晴らしい。

第9位 メイン・マン(1972)
Main Man

songwriter : Marc Bolan

ザ・スライダー【K2HD/日本盤初版LP再現紙ジャケット仕様】

リンゴ・スターが撮ったジャケット写真のカッコ良さでも有名な3rd『ザ・スライダー(The Slider)』のエンディングを飾る曲。

これもT.レックスらしいクソみたいに極めて単純なスロー・バラードのひとつだ。わたしはこの曲が大好きだが、これのどこがいいのかを説明するのは禅問答ぐらい難しい。

まったく中身がないことはわかっているけれど、ちょっと神妙な気持ちになったりする。

わたしのT.レックス好きの友人が死んだら、出棺時にこの曲を口づさみながら棺を運びたいと思うほどだ。

第8位 マンボ・サン(1971)
Mambo Sun

songwriter : Marc Bolan

電気の武者+8

名盤『電気の武者』のオープニングを飾るのがこの曲だ。

最初聴いたときは、声も楽器の音も加工が凄くて、これはテクノの一種なのかと思ったほど非現実的なサウンドに聴こえた。でもそこが気に入った。

初心者向けのコードを2つか3つで、歌メロも2つか3つで、歌詞はまったく意味が無くても、すべてがニセモノっぽくても、それこそがT.レックスの唯一無比の魅力である。

第7位 チルドレン・オブ・ザ・レボリューション(1972)
Children of the Revolution

songwriter : Marc Bolan

Children Of The Revolution EP

なんだか殿様でも登場しそうな迫力のイントロが印象的だ。

シングルのみで発売された曲で、全英2位の大ヒットとなった。

第6位 ティーンエイジ・ドリーム(1974)
Teenage Dream

songwriter : Marc Bolan

Zinc Alloy & the Hidden Riders of Tomorr [12 inch Analog]

5枚目のアルバム『ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー(Zinc Alloy And The Hidden Riders Of Tomorrow Or A Creamed Cage In August)』という長ったらしいタイトルのアルバムからのシングル。全英13位のヒットとなった。
邦題に「仮面ライダー」という言葉が入っているのは、マーク・ボランが来日時に『仮面ライダー』をテレビで見て、いたく気に入ったからなのだそうだ。

74年にはすでにグラム・ロックのブームも下火になっていた。
十代の少年少女たちにとって夢のような時代が終わった、そんなせつない気持ちにさせる曲だ。

第5位 地下世界のダンディ(1977)
Dandy In The Underworld

songwriter : Marc Bolan

Dandy in the Underworld

T.レックスの最後のアルバムとなった、1977年の『地下世界のダンディ(Dandy In The Underworld)』のタイトル曲。

マーク・ボラン自身が「僕は30歳まで生きられないかもしれない」と語っていた通り、このアルバムの半年後、30歳になる2週間前に交通事故で世を去った。

グラム・ロックのブームが終わって人気が凋落し、マーク・ボランはアルコールに溺れる日々を送ったが、このアルバムにはもう一度復活を目指した決意みたいなものが感じられた。

運命は非情なものだ。

第4位 メタル・グゥルー(1972)
Metal Guru

songwriter : Marc Bolan

ザ・スライダー【K2HD/日本盤初版LP再現紙ジャケット仕様】

名盤『ザ・スライダー』のオープニングを飾る曲。全英1位の大ヒットとなった。

グラム・ロックのピークを象徴するような、お祭りみたいに賑やかで輝かしい曲だ。

クソみたいなきわめて単純な曲をこれほど魅力的にしている、プロデューサーのトニー・ヴィスコンティのセンスと手腕はめちゃくちゃ凄かったと思う。

第3位 テレグラム・サム(19720)
Telegram Sam

songwriter : Marc Bolan

ザ・スライダー【K2HD/日本盤初版LP再現紙ジャケット仕様】

『ザ・スライダー』からのシングルで、全英1位の大ヒット曲。
いかにもT.レックスらしい、シンプルなブギだ。

初めて聴いたときは、たったこれだけの単純なギターのリフが、鳥肌が立つぐらいカッコよかった。

マーク・ボランは、単純で簡単で普通で安っぽいものを、ものすごくカッコ良く聴かせることができる天才なのだろう。

「テレグラム・サム」の過去記事はこちら

第2位 ゲット・イット・オン(1971)
Get It On

songwriter : Marc Bolan

電気の武者+8

T.レックスの代表曲で、全英1位、全米10位の大ヒット曲。T.レックスはアメリカではあまり売れなかったが、この曲が唯一ヒットした。

そんなに上手くもないヴォーカルと、たどたどしいギターに、最高のプロデュース・ワークで、一生聴ける唯一無比の奇跡のような逸品に仕上がっている。

「ゲット・イット・オン」の過去記事はこちら

第1位 20センチュリー・ボーイ(1973)
20th Century Boy

songwriter : Marc Bolan

20センチュリー・ボーイ

T.レックスが来日したときに、東芝のスタジオで録音されたシングル。全英3位のヒットとなった。

日本では、2008年に映画化され大ヒットした浦沢直樹の漫画『20世紀少年』のタイトルにもなり、映画公開時はこの曲を使ったCMが1日中流れていたし、バラエティ番組やCMでもしょっちゅう使われている印象だ。現在は堺雅人が出演している、マクドナルドのCMに使われている。
日本人には圧倒的に知られている、T.レックスの代表曲だ。

なんといっても指1本で弾けるギター・リフの、あのものすごい爆音が印象的だけれども、T.レックスの他の曲にはあんな物凄い音はないので、ああいう音が出るアンプや機材が東芝のスタジオにたまたまあったのだろうか。

事情は分からないけれども、あの音こそまさに〈ロックンロール・マジック〉の瞬間だ。

「20センチュリー・ボーイ」の過去記事はこちら

以上、T.レックス【名曲ベストテン】T.Rex Greatest 10 Songsでした。(by goro)

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