はじめてのニルヴァーナ 名曲10選 10 Nirvana Songs to Listen to First

ネヴァーマインド
驚天動地の世界的ブレイク

1989年、日本の元号では平成元年に、米国ワシントン州シアトルのインディーズレーベル〈サブ・ポップ〉から、1stアルバム『ブリーチ』でニルヴァーナはデビューした。

翌年にメジャーレーベルに移籍し、2ndアルバム『ネヴァーマインド』を発表すると、ロックシーンは激震、上を下への大騒ぎとなり、一生売れないと思われていた「オルタナティヴ・ロック」の薄汚れたロックバンドが驚天動地の世界的ブレイクを果たした。

その影響でMTV全盛時代の華やかだったロックシーンは価値観がひっくり返って王様と乞食が入れ替わり、阿鼻叫喚の地獄絵図となり、まさにセックス・ピストルズ以来のロック革命となったのであった。


ニルヴァーナ・ベスト
はじめてのニルヴァーナ

ここではそんな、平成ロックの革命児(ダセぇな)、ニルヴァーナをはじめて聴く人のために、彼らの数ある名曲の中でも、最高の名曲を10曲選びました。
マニアックなファンが陥りがちな、ヘンにヒネった選曲は一切ありません。全球ど真ん中のどストレートです。

そしてニルヴァーナを初めて聴く方のために、わかりやすく重要度の高い順に聴き進めていけるようにその並びにもこだわりました。

全曲MV付きですので、「No.1」から聴き始めて、気に入ったら「No.2」「No.3」と順に聴き進めてみましょう。

早めに挫折された方は、ニルヴァーナはあきらめて、他の音楽を探しましょう。


No.1 スメルズ・ライク・ティーン・スピリット(1991)
Smells Like Teen Spirit

ネヴァーマインド

まずはニルヴァーナを世に解き放ったモンスター・シングルから。

彼らの音楽はユーモアと殺伐と轟音ギターとポップでわかりやすいメロディが融合し、まるで当時のわたしがロックに対して望むすべてのものが揃っているかのようだった。

セックス・ピストルズの時代を知らないわれわれにとっては、やっとお祭りが始まったのだ。

あの頃は楽しかったなあ。

ついにおれの時代が来たか、と思ったものだった。

いや、彼らの時代が来ただけなのだけど。


No.2 カム・アズ・ユー・アー(1991)
Come As You Are

ネヴァーマインド

「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」はめっちゃカッコいいけど、そこには「ハード・ロック風」という食いつきやすい要素があったので、その路線だけだったら、彼らは掃いて捨てるほどいるハード・ロック風バンドの一発屋で終わっていたかもしれない。

オリジナリティで言うとむしろこの「カム・アズ・ユー・アー」のほうが、これぞニルヴァーナ、という気がしないでもない。

静かでメロディアスな部分と、爆音で絶叫する部分の対比を際立たせるのがこれらの楽曲のパターンで、平成ロックはそれの上っ面の真似だけが大流行したけど、だれも真似できなかったのが、その一瞬にして耳を持って行かれる、フックのあるメロディだった。

歌メロもそうだしギターのリフもそうだけど、こういうオリジナリティのあるメロディをポンとだしてくるところなんて凄かったな。


No.3 リチウム(1991)
Lithium

ネヴァーマインド

この曲には、カッコ良さだけではない、カッコ悪さとせつなさと心強さを感じる。

わたしはそういう歌が好きなのだ。

ニルヴァーナの歌はたいていそうだけど、歌詞にはほとんど意味がなく、この曲もドラッグソングではあるけれど、たいして意味はない。

でも、意味がないのに心に刺さる不思議。


No.4 イン・ブルーム(1991)
In Bloom

ネヴァーマインド

サブ・ポップから発売された1st『ブリーチ』と、ゲフィンから発売された2nd『ネヴァーマインド』の明らかな違いは、プロデューサーの違いやカートのソングライティングの成長とか、いろんな要素があるだろうけど、意外と一番はドラマーが2ndでデイヴ・グロールに変わったということかもしれない。

このデイヴ・グロールのドラムでなければ、『ネヴァーマインド』はここまで素晴らしいアルバムになっていたかわからない。あんなにバカ売れした(世界で4千万枚以上)かどうかもあやしい。デイヴの功績はものすごく大きいと思う。

デイヴはこの「イン・ブルーム」ではサビのコーラスも務めている。これもまた良い感じだ。


No.5 オール・アポロジーズ(1993)
All Apologies

イン・ユーテロ

カート・コバーンは1994年4月に、猟銃自殺をした。

わたしはそれをTVのお昼のニュースで見た。

アナウンサーが、「アメリカのロックグループ、ニルヴァーナのカート・コバーンさんが死去しました。27歳でした。死因は自殺とみられています」と伝え、ニルヴァーナが出演したMTVアンプラグドでカートがこの「オール・アポロジーズ」を歌っているところを映し出した。

わたしはそれまでに聞いたどんなウソよりも信じがたい気持ちで、口をぽかんとあけて座り込んだままだった。きっと半笑いみたいな半泣きみたいなアホみたいな顔をしていたにちがいない。

そのアナウンサーは続けて、「これでニルヴァーナは終わり、グランジブームも終わり、そしてロックの歴史も、本日をもって幕を下ろすことになるでしょう。残念ですね」と言ったような気がしたのだけれど、それはもしかするとわたしの思い込みだったのかもしれない。

『イン・ユーテロ』収録。


No.6 ダイヴ(1990)
Dive

インセスティサイド

『ネヴァーマインド』から1年後の1992年、今出せば絶対に売れるとわかっているのに全然新作を出そうとしないニルヴァーナに対して、レコード会社が業を煮やして、インディーズ自体のシングルのB面やアウトテイクやライヴやカバーをかき集めて、まとめた編集盤『インセスティサイド』を発売した。

そんなものでも当時は、とにかく世界はニルヴァーナを待っているので、めちゃくちゃ売れた。
わたしも飛びついた。むさぼり聴いた。

しかも編集盤ではあっても、ちゃんとニルヴァーナらしい良い曲も入っている。
その筆頭がこの「ダイヴ」だ。
この曲はサブ・ポップから出した2枚目のシングル「スリヴァー」のカップリング曲だ。

ニルヴァーナらしい、一瞬にして耳を持って行かれる不穏なメロディとサビの絶叫が気持ちいい。


No.7 スリヴァー(1990)
Sliver

インセスティサイド

『ブリーチ』と『ネヴァーマインド』のちょうど谷間に、サブ・ポップから発売されたシングル。『インセスティサイド』収録。

それまではストゥージズやMC5のようなノイジーで激しいパンクロックがメインだったニルヴァーナが、この「スリヴァー」で『ネヴァーマインド』の方向に一歩踏み出したというのがよくわかる曲だ。


No.8 アバウト・ア・ガール(1989)
About A Girl

Bleach

1stの『ブリーチ』ももちろんいいアルバムだけれど、その中でも特筆すべきなのがこの曲だと思う。

ぎょっとするような曲の展開や、フックのあるメロディなど、カート・コバーン独特のソングライティングが覚醒した曲と言えるかもしれない。

ライヴアルバム『MTV・アンプラグド・イン・ニューヨーク』では冒頭を飾る曲で、2曲目が「カム・アズ・ユー・アー」なのだけれど、この2曲のつながりがすごく良い。
これぞニルヴァーナ、と思える瞬間だ。


No.9 ステイ・アウェイ(1991)
Stay Away

ネヴァーマインド

『ネヴァーマインド』の中でも特に疾走感が気持ちいい、ニルヴァーナ流のパンク・ロックだ。

イントロのクリスのベースもカッコいいけれど、こうやってライヴ映像で見るとやっぱりデイヴのドラムはいつ見てもカッケーなあとあらためて思わざるを得ない。

この全力で叩く感じが、狂っていた頃のキース・ムーン(ザ・フー)を思いだす。


No.10 レイプ・ミー(1993)
Rape Me

イン・ユーテロ

最後は3rdアルバム『イン・ユーテロ』からの問題作、「わたしを犯して」だ(そんな邦題は無いが)。

前作『ネヴァーマインド』がまるでホイットニー・ヒューストンのアルバムみたいにバカ売れしたことに対してニルヴァーナのインディーズ魂が危機感を感じたのかもしれない。

シカゴで「レイプマン」というバカな名前のバンドをやっていた鬼才エンジニア、スティーヴ・アルビニをあえてプロデューサーに迎えて、あえて不機嫌で殺伐とした世界観のアルバム『イン・ユーテロ』をつくった。

不機嫌で殺伐とはしているが、楽曲は相変わらず、カート・コバーンらしいよく出来た良い曲が多い。

初めてこの「レイプ・ミー」を聴いたときは、その歌詞についに狂ったのかと思ったけれど、『ネヴァーマインド』が売れていきなり世界的に有名になったことでなにか相当嫌な目にもあったのかも知れない。

自分の人生が突然天下に晒されて、むちゃくちゃにされた気分にでもなったような。


おめでとうございます!

ここまで聴いてきて、めでたくすべて気に入ってしまった方は、もう、立派なニルヴァーナファンです。

握手しましょう。

ニルヴァーナの全アルバムを揃えて、死ぬまでお楽しみください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする