はじめてのザ・フー 名曲10選 10 The Who Songs to Listen to First

My Generation [12 inch Analog]

カッコいいスポーツカーも持っていないし、ダンスをしてくれる女の子もいない。
流行のファッシュンも似合わないし、人とのコミュニケーションが大の苦手。
まともな社会人にもなる自信もなくて、生きていくことが不安でしょうがない。

そんな非リア充の若者たちのフラストレーションや反抗を、ロックで表現したのがザ・フーであり、それはそのままパンク・ロックの源流ともなった。

ザ・フーには若者らしい問題意識と、実験精神と、ポップセンスと、そしてユーモアが備わっていた。

わたしはこのブログで繰り返し書いているが、音楽に限らずどのような芸術形態でも、ユーモアのセンスに欠ける表現者は二流だと思っている。

その点、ザ・フーは超一流のアーティストだった。

ここではそんなザ・フーの名曲から、はじめて聴く人にもザ・フーがよくわかるような、「こんなレコードがあったらいいな」と思う10曲入りベスト・アルバムをつくるつもりで、厳選してみました。

#1 アイ・キャント・エクスプレイン(1964)
I Can’t Explain

フーズ・ベター・フーズ・ベスト

ザ・フーのデビュー・シングルで、全英8位のヒットとなった。

「説明できない」という意味のタイトルがいかにもザ・フーらしいし、シンプル・イズ・ベストなガレージ・ロックだ。

胸の中に生まれた熱い感覚や辛い気持ちをうまく説明できない、という歌詞で、恋愛のことを歌っているようにも取れるけれど、やっぱりザ・フーなのでわたしは「新しい世代が感じているこの気持ちは、古い世代の言葉じゃ説明出来ないんだ」とでも受け取りたい。
なぜならそのほうがカッコいいからだ。

こんなにカッコいい曲なのだから、それにふさわしい意味を想像しながら聴くほうがいいじゃない。

#2 マイ・ジェネレーション(1965)
MY Generation

マイ・ジェネレイション(モノ&ステレオ)

ザ・フーの代表曲であり、ロック史上最初のパンクロック・アンセムと言っても間違いではないと思う。

ザ・フーは既存の社会や大人たちの価値観に反抗し、若い世代の声を、当時としてはこれ以上ないほどの騒々しさとユーモアで表現した。
ザ・フーが初めてレコードに録音したと言われるフィードバックノイズは、まるでやり場のないフラストレーションの大放電のように聴こえる。

この曲が面白いのは、オトナたちに不満をぶつけて、新しい世代として主張をしたいのだけど、ドモリがひどくてうまく言えないという設定だ。

ザ・フーの描く若者はいつもそうだけど、若者たちの代弁者のようなヒーローではなく、コミュニケーションに致命的な難があり、社会に参加することに不安を感じ、劣等意識を抱えた、どこにでもいる若者だ。

この曲を書いたザ・フーのギタリスト、ピート・タウンゼントは当時たったの20歳。
その暴発寸前のエネルギーと新時代の才能に、大人たちはさぞかしビビっただろう。

まさに「恐るべき子供たち」である。

#3 キッズ・アー・オールライト(1965)
The Kids Are Alright

Kids Are Alright - O.S.T.

この曲も1stアルバムに収録された、ザ・フー初期の代表曲だ。
わたしはこの曲が大好きだ。ザ・フーでいちばん好きかもしれない。

初めてこの曲を聴いたときは、そのシンプルなムダの無さに感心した。これもまた、10万回聴いても飽きないタイプの曲だ。

「あいつらなら大丈夫」と、社会の底辺のクソガキどもを肯定する優しさに溢れた、カッコよくて、美しくて、感動的な曲だ。

弱冠20才でこんな曲を書いたピート・タウンゼントの才能と優れたポップセンスに恐れ入る。

#4 恋のピンチヒッター(1966)
Substitute

恋のピンチ・ヒッター<日本デビュー50周年記念第2弾>(紙ジャケット仕様)

ヘンな邦題だけど、”Substitute”とは「代わり」「代理」「代用」というような意味らしい。

「なにからなにまでウソだしニセモノだ」みたいな、ユーモラスだけど意外と核心をついてくる歌詞だ。
鋭く深い歌詞を天才的なポップセンスでキャッチーでキレのいいロックナンバーにする、ピートの真骨頂である。

それにしても66年でこれは凄いな。
斬新すぎる。

#5 恋のマジック・アイ(1967)
I Can See For Miles

Sell Out

ザ・フーの3rdアルバム『セル・アウト』からのシングルで、全米チャート9位と、ザ・フーにとってアメリカで1番売れたシングルだ。

しかしイギリスでは伸び悩み、それまでのシングルよりも低い10位どまりだったことがピートは不満だったようだ。

この曲は俺にとって最高の出来だったのに売れなかった。イギリスのバイヤー達に唾をかけてやったよ。
(出典:ウィキペディア)

一聴するとドラムのキース・ムーンの手数がすごくてバケモノみたいだが、もちろんこれはオーバーダビングだ。
実際のステージでは再現不可能なので、ライヴで演奏されたことはほとんど無いらしい。

#6 マジック・バス(1968)
Magic Bus

Magic Bus

68年に発表された、オリジナル・アルバムには未収録のシングル。英26位、米25位。

ボ・ディドリーが発明したジャングルビートをアレンジしたようなリズムが独特でカッコいい曲だ。

ピートは演奏してていちばん楽しいのがこの曲だそうだが、ジョンは逆にベース・パートが単調すぎて大嫌いだったそうだ。

#7 ピンボールの魔術師(1968)
Pinball Wizard

Tommy-Remastered

68年発表の史上初のロック・オペラ、『トミー』からのシングル。
全英4位のヒットとなった。

『トミー』は、幼少時代のトラウマから、見えない・聴こえない・話せないという三重苦を負った少年トミーの物語である。
虐待などの不幸な少年時代を経て、神がかり的なピンボールの才能を発揮してカリスマとなり教団となるほどエスカレートしていくが、最後には支持者を失って没落する。

ロック・オペラ『トミー』はロジャー・ダルトリー主演で映画化され、ブロードウェイでミュージカルとしても上演された。

『トミー』は、画期的でロック史にも大きな影響を及ぼしたし、良い曲もあるものの、わたしはザ・フーのはっちゃけたワイルドなカッコ良さとガレージ・サウンドが失われてしまったような印象で、そこまで好きではない。

#8 サマータイム・ブルース(1970)
Summertime Blues

ライヴ・アット・リーズ+8

エディ・コクランの名曲のカバーで、1970年発表の、ザ・フー初のライヴ・アルバム『ライヴ・アット・リーズ』に収録曲された。シングルカットもされ、全英38位。

「サマータイム・ブルース」には数多くのカバーが存在するが、わたしが聴いた限りではこのザ・フーのバージョンが掛け値なしに最高傑作だと思う。

カバーじゃなくて、もうほとんどオリジナルと言ってもいいんじゃないかと思うほど、オリジナル以上の魅力を備えたバージョンだ。

また、このリーズ大学でのコンサートの模様を録音した『ライヴ・アット・リーズ』はロック史上でも5本の指に入る、傑作ライヴ・アルバムだと思う。

ザ・フーが本気をモロ出しにしたような、凄みのある演奏に圧倒される名盤である。

#9 ババ・オライリィ(1971)
Baba O’Riley

Who's Next

ザ・フーの5枚目のアルバム『フーズ・ネクスト』の冒頭に収められた曲。躍動感のある、青春の雄叫びみたいなナンバーだ。

もともとはロック・オペラ第2弾『ライフハウス』を制作するつもりだったのがうまくいかず、そのために用意していた曲を使ってのあり合わせみたいな感じで作られたのがこの『フーズ・ネクスト』だったのだが、それが結局ザ・フーの最高傑作とされるアルバムになったのだから、結果オーライである。

60年代のザ・フーに比べると、ハードロックやプログレ方面に路線を寄せていく頃だけど、「十代なんてクソつまんねえ!(teenage wasteland!)」なんて憤りを顕わにするのは「マイ・ジェネレーション」の頃からちっとも変わっていない。

#10 無法の世界(1971)
Won’t Get Fooled Again

Who's Next

デビュー以来一貫して、大人と社会に対してケンカ腰のザ・フーは、しかしその知性とユーモアによって、攻撃的だけれどポジティヴで斬新な楽曲を創造し続けた。

この曲は、革命について異を唱えている歌だ。

革命なんて、多くの人が傷つくだけだ、とピートは語っている。

もちろん、国民を虐げたり自由を奪ったりするような体制は倒されたほうがいいにきまってるけど、倒した指導者が今度は体制の維持のために反対派を排除し、国民を管理・抑圧していった当時の共産主義革命のことを指しているのだろう。

この、人が人を支配するための争いの繰り返しに、心底虚しい気持ちで、「二度と信じるものか!」とザ・フーは歌っている。

国境がなくなって世界中がひとつになるユートピアを空想するのもいいけど、ザ・フーはいつだって現実にストリート立つ人々の側に立って、世界の不条理や冷酷さや虚しさと闘う歌を歌っていたのだ。

以上、【はじめてのザ・フー 名曲10選】でした。

オリジナル・アルバムを聴くなら、まずは1stの『マイ・ジェネレーション』、次に『ライヴ・アット・リーズ』、そして『フーズ・ネクスト』という順番に聴くのをお薦めしたい。

あと、『ライヴ・アット・リーズ』は完全版やデラックス仕様のものではなく、6曲しか入っていないオリジナルのほうを絶対におススメする。
なんでもたくさん入っていればいいってものではない。選曲や曲順も作品のうちなのだ。

また、ザ・フーはアルバム未収録のシングルに名曲も多いので、ベスト盤から聴くのも全然良いと思う。

The Ultimate Collection

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. kaoru watanabe より:

    ほぼ同感です。kids are allrightが一番好きかも、というあたりも同じですね。似たようなセンスを持っているのかもしれません。自分としては、so sad about usを加えて欲しかったですが。これは、jamの方をよく聞いてますが。
    このベスト10の選曲及びトミーについてのコメントを見ても、やはりwhoは70年代はあまり評価できないと言うことになるんでしょうか。自分の評価はそうで、そのため70年代のはほとんど聞いてません。
    なお、jamに触れましたが、jamはよくwhoからの影響を論じられますが、それも初期の頃はあるものの、全体としてはbeatlesの影響の方が大きいと思っています。paul wellerの発言から分かるところですが(子供の名前にもjohn とpaulを使っているし)。

    • ゴロー より:

      コメントありがとうございます!

      そうですね、わたしもやっぱり70年代よりも、60年代のザ・フーが圧倒的に好きですね。

      楽曲の出来とかいう以前に、ザ・フーはあのモノラル録音のクソやかましいグシャッとした音の方がよく似合うと思ってしまうのですね。

      ステレオ録音になって、音質がきれいになればなるほど、なんだかザ・フーの魅力が失われていったような気がしてしまいます。

      個人的には『フーズ・ネクスト』までかな。。