【映画】『フィール・ライク・ゴーイング・ホーム』(2003) ★★★☆☆

フィール・ライク・ゴーイング・ホーム [DVD]

【音楽映画の快楽】
Feel Like Going Home

監督:マーティン・スコセッシ
出演:コリー・ハリス、オサー・ターナー、ケヴ・モ、他

マーティン・スコセッシ製作総指揮の『ザ・ブルース・ムーヴィー・プロジェクト』の1作で、本作はスコセッシ自身が監督したドキュメンタリー作品だ。

現役ブルースマンのコリー・ハリスが、ブルースのルーツを辿り、サン・ハウスやロバート・ジョンソン、チャーリー・パットンなどを知る人を訪ねて話を聞き、伝説のファイフ奏者と対面し、さらにブルースの起源とされる西アフリカを訪れる。

およそ100年前、武力で支配する白人に強制的に船に乗せられ、遠くアメリカの地で奴隷として働かされることになったアフリカの人々。
「綿花畑での過酷な労働に、神が唯一与えた癒しがブルースだった」と語る。

農園で働かされたアフリカ人たちは、酷い仕打ちをする「悪い女」の歌を多く歌ったが、それは実は白人のボスのことだった、とも語る。

白人はアフリカ人たちから、自由も財産も故郷もすべてを奪ったが、彼らの魂と共にある〈音楽〉だけは奪えなかった。それは故郷から遠く離れ、哀しみと絶望と重労働の日々の中で〈ブルース〉が形作られていったに違いない。

そんなアフリカ人の魂の音楽からやがてロックやポップスは生まれ、爆発的に世界に拡がり、地球上のあらゆる地域であらゆる人種がそれを楽しむようになっている。
不自由な生活から逃れることができないすべての労働者が魂で共感するものが、ブルースのDNAを持つロックやポップスの中に今も脈々と生きているのかもしれない。

音楽映画を見ていて嬉しいことのひとつは、歌詞の意味がよくわからずに聴いていたような名曲が作中で使われ、歌詞を日本語字幕に翻訳してくれることだ。

本作では、チャーリー・パットンが1927年のミシシッピ川の氾濫の様子を克明に歌った「ハイ・ウォーター・エヴリウェア」の歌詞に感動した。

曲の一部だけだし、字幕なのでだいぶ省略してあったりするだろうけれども、映画で使われた字幕をそのまま書き起こしてみよう。

夏の間じゅう川が氾濫して
おれを押し流す
夏に川が氾濫して
チャーリーを押し流す
みんなに言うよ
川が町に飛び込んだ
神よ、辺り一面が水浸しだよ
丘の上で暮らそうか
だがおれはムショ送り
ああ、女や子供が溺れてく
家族がいなくなった
1人も見つからない

「丘の上で暮らそうか、だがおれはムショ送り」というのは、このとき、黒人たちには所属する農園から離れる自由がなく、洪水から逃れるために高い場所へ逃げれば逮捕・拘束されたということらしい。

記事を書いた人(Goro)

愛知県在住。中学卒業後、無知蒙昧のまま社会にさ迷い出て、底辺職を転々した後、地元の映画館に拾われる。映画館に10年勤めた後、レンタルビデオチェーンのバイヤーを20年勤め、現在は再び底辺職で肉体労働の日々に返り咲く。心に平安が訪れている。生活に不満はなし。音楽にはいろいろと救われている。「映画は映画館で観なきゃダメ派」ではない。

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