【映画】『グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの』(2012米) ★★★☆☆

グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの [DVD]

【音楽映画の快楽】
Greetings From Tim Buckley

監督:ダニエル・アルグラント
主演:ペン・バッジリー

1994年に27歳でデビューして「天使の歌声」と高く評価されたものの、アルバム1作だけを遺して30歳で夭折(ミシシッピ川を泳いでいて溺死)したカリフォルニア州出身のシンガー・ソングライター、ジェフ・バックリィを主人公に、その父への想いや葛藤を中心に描いた音楽伝記映画。

彼の父・ティム・バックリィは、60年代後半~70年代前半にかけてカリフォルニアを拠点に活動したシンガー・ソング・ライターで、その内省的な楽曲と独特の歌声で9枚のアルバムを残した。28歳でヘロインのオーバードーズで死んだ後もカルト的な人気を得ていた。

ティムは最初の妻と結婚した後も様々な女性と関係を持ち、1年で離婚した。離婚後に産まれたのがこの映画の主人公・ジェフで、そのため彼は父親のティムにほぼ会ったことがない。

物語は、アマチュアとして歌っていたジェフに、父親のトリビュート・コンサートに出演しないかと誘いが来るところから始まる。

父親の歌を歌ったことはなく、父親を「愛を歌いながら実生活では裏切りを繰り返し、最後はオーバードーズで死んだインチキ野郎」と憎んでいるジェフは、葛藤しながらも、父親とかつて一緒に演奏していたギタリストからギターの技術を教わっているうちに次第に心が解かれていく。
この辺りの、ギターを教わりながらというところがいかにもミュージシャン的でいいなあと思った。

結果的に、ニューヨークで行われたそのトリビュート・ライブでのジェフの演奏が評判になり、デビューへとつながっていく。

ティム・バックリィの楽曲をふんだんに使いながら、父親への憎悪や葛藤も表現され、深い感情と音楽が交差する良い映画だと思った。
音楽伝記映画はたくさんあるけれど、父と子が同じようなアーティスト(しかも2人とも夭折)の物語というのは滅多にないぶん興味深かった。

しかしわたしは、ジェフ・バックリィの『グレース』は聴いたけど、ティム・バックリィの音楽はほとんど聴いていない。

いつかちゃんと聴いてみよう。