アニマルズ/朝日のない街(1965)

BEST OF THE ANIMALS

【60年代ロックの快楽】
The Animals – We Gotta Get Out of This Place

最近のGoogleの翻訳機能は進化しすぎてしまったのか、「We Gotta Get Out of This Place」と入力すると「朝日のない街」と出てくる。そんなわけはないだろうに。歌の邦題を記憶させてどうする。

この曲は米ニューヨークのブリル・ビルディング(音楽業界のオフィスやスタジオが集まるビル)の職業ソングライター、バリー・マンとシンシア・ウェルによって書かれた曲で、全英2位、全米13位の大ヒットとなった。タイトルは前年の大ヒット曲「朝日のあたる家」にむりやり寄せたものだろう。直訳のわけがない。

「おれたちはこんなところに居るべきじゃない。おれたちにはもっと良い未来、別の人生があるはずだ。おれはここから出て行くぞ!」と歌う歌だ。

当時、ベトナムの地で戦っていた米軍兵士たちに最も人気があった曲だったそうだ。悪夢のような地獄の地から一刻も早く脱出したかったのだろう。
また、ブルース・スプリングスティーンが「おれの歌のすべての原点がこの曲にある」とも語っている。たしかに、「明日なき暴走」も「涙のサンダーロード」も、閉塞感に耐えられない場所から出て行って人生を変えようとする歌だ。

1965年はストーンズの「サティスファクション」やザ・フーの「マイ・ジェネレーション」が生まれ、ロック・ミュージックは新世代の若者たちにとって、大人たちがつくった既存の社会のありかたに抵抗するカウンター・カルチャーとして支持され、より拡がりと勢いを増したが、アニマルズのこの曲もそんな時代を象徴する1曲となった。

しかし、アニマルズのオリジナル・ヒット曲の多くは既存の音楽産業と同じ職業ソングライターたちに依拠したもので、それはカウンター・カルチャーの在り方とは違うものだった。
新世代のロックバンドにとっての至上命題だった「自分たちの思いを自分たちの言葉で歌う」ことへと移行できなかったことは致命的となり、この後、ビートルズ、ストーンズ、ザ・フー、キンクスといった、素晴らしいオリジナル曲を量産して若者の熱狂的な支持を受けたブリティッシュ・ビート・バンドの同期生たちに大きく水を開けられることとなった。

1966年以降、アニマルズはサンフランシスコに本拠を移し、当地で流行のサイケデリック・ロックの要素なども取り入れて活動を続けたが、大きな成功は得られず、1969年に解散してしまう。

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