バッファロー・スプリングフィールド/折れた矢(1967)

Buffalo Springfield Again [Analog]

【60年代ロックの快楽】
Buffalo Springfield – Broken Arrow

名盤2nd『バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン』のラストを飾る、ニール・ヤング作。リード・ヴォーカルもニール・ヤングだ。わたしはバッファロー・スプリングフィールはこれが最高傑作だと思っている。

この2ndアルバムを録音していた時期はとにかくバンド内の人間関係が最悪だったらしい。ニール・ヤングとスティーブン・スティルスは互いにギターを投げ合うほどの大げんかを繰り広げたという。

互いが別々の方向を向き、自己主張をして一歩も譲らず、録音もそれぞれが勝手に進め、バンドとしてはほとんど崩壊同然と言える状況で制作されたのが彼らの最高傑作となったのだからロックというのはよくわからんものである。

ちょうど同じ時期にイギリスではビートルズが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を制作中だった。
どちらも実験的であり、それまでのロックやポップスの常識にとらわれない様式や、ジャズや民族音楽やクラシックなど様々な音楽的要素も取り入れた、歴史的名盤が米英で同時に生まれているのが面白い。

ビートルズのライヴの歓声を使ったSEから始まるこの曲は、一聴すると複雑な曲に聴こえるが、実際は各コーラスの間にSEやジャズコンボや太鼓やらクラリネットのメロディやらを挟んだだけで、それほど複雑なものではない。なんとなく、『サージェント・ペパーズ』のラストを飾る「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を思い出すような、意外な展開の実験性とメロディの抒情性が程よいバランスで成立している傑作だ。

この曲の録音にはバンドのメンバーは参加しておらず、ニールとプロデューサーだけでほぼ作ったらしい。リッチー・フューレイのコーラスも後で録って追加したものだそうだ。どうやらバンドの崩壊状態はビートルズ以上だったようだ。

ちなみに、1991年発表のフリッパーズ・ギターのラスト・アルバム『ヘッド博士の世界塔』のオープニング・トラック、(ビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る」のサンプリングで始まる)「ドルフィン・ソング」では大々的にこの曲がパクられて引用されている。
アルバムも全体にロックの名曲の無許可サンプリングをしまくって作られた、当時は前代未聞の快作だった。しかしたぶんそのせいか、現在ではこのアルバムだけリマスターもされず、再発もされていない。持ってる人は貴重。やったぜ。

↓ フリッパーズ・ギター「ドルフィン・ソング」。