わたしがロックバンド、またはロック・アーティストを初めて聴くときに、まず最初に気になるのが、ヴォーカルの声とギターの音だ。まあ大半のロック好きはそうじゃないかと思う。
わたしはギターを弾かないので技術的なことはわからないし、速弾きや超絶技巧にもまったく興味がない。上手くても下手でもどっちでもいいから、とにかくカッコ良ければすべてヨシだ。わたしを興奮させてくれればそれでいい。もちろん、大前提として良い曲を書いてほしいけれども。単なるプレイヤーよりは、やっぱり創造的なギタリストのほうが好きだ。なんたってギターという楽器は、ロックンロールを生み出すことができる魔法の杖ような道具なのだから。
そんなわけで、以下は、わたしが愛する10大ギタリストです。
たぶんギターガチ勢の方々などにはまったく納得いかないかもしれないけれども、「わたしの10大ギタリスト」なので、こればっかりはしかたがない。
順位は特にありません。生年順に並んでいます。
Chuck Berry (1926-2017)
まずは、ロックンロールの創造主と言っても過言ではない、われわれロック好きにとっては神様同然のギタリスト、チャック・ベリーから。
エネルギッシュな推進力と刃物のような切れ味の彼のギターは、ネオンサインのようにピカピカの音が輝きを放っている。まるでエレキギターが、この世に生まれた時からチャック・ベリーに弾かれるのを待っていたかのように嬉しそうに鳴いている。
70年前に生まれた眩いばかりのロックンロールは、わたしには未だに色褪せては聴こえないのだ。
Jimi Hendrix (1942-1970)
言わずと知れた、ロック史上最高のギタリストである。
しかし彼の技術がどれほど高度だったか、なんてことはどうでもいい。
彼の生み出す、世にもおぞましい獰猛な咆哮、野生の饐えた匂いがするグロテスクな音がわたしは好きだ。見たこともないロックの真っ暗な深淵が覗けるような気がしてくる。
チャック・ベリーが創造したロックンロールを、ジミ・ヘンドリックスは一気に進化させた突然変異種のようなものだろう。
(ザ・ローリング・ストーンズ)
Keith Richards (1943-)
若い頃はドラッグ漬けで逮捕もされたダメダメ人間で、決してギターが上手いと言われたこともなく、リード・ギタリストでもないのに、いったいこれまで何人の少年たちがこの男に憧れてギターを始めたことだろう。もし世界中のプロもアマも含めた何万というギタリストたちに「誰に憧れてギターを始めましたか?」と質問したら、1位になるのは彼ではないかという気がする。
60年代末に彼が発明しトレードマークとなった、「ブラウン・シュガー」のオープンGチューニングによる≪リズムリフ≫、その発光する悪魔のチョップ攻撃みたいなイントロは、ストーンズ最強時代の幕開けとなった。
もちろん、彼がロック史に残した偉大な功績はそのギタープレイだけでなく、たぶんロック史上最も多くの名曲を量産したソングライターでもあることだ。
ザ・ローリング・ストーンズ【100グレイテスト・ソングス】はこちら
(ザ・フー)
Pete Townshend (1945-)
パンクの源流へ遡ると、ザ・フーに辿り着く。ピート・タウンゼントはまずそのパフォーマンスがカッコいい。あの長身で飛び跳ね、腕をグルグルと振り回すから目立ってしょうがない。ヴォーカリストよりも目立っているぐらいだ。そのうえ最後はギターを叩き壊すと来る。
彼はギター・ソロをチマチマと弾くタイプではない。彼のパフォーマンスそのままの、豪快な音が好きだ。まさにパンクのお手本のような、時折フィードバック・ノイズも発射しながら、大音量でコードを力任せに弾く。わたしはそういうギタリストが好きなのだ。
Neil Young (1945-)
ニール・ヤングのギターはテクニックではない。燃え上がる情念だ。そして魂が震えて雄たけびを上げるのだ。
彼の名曲の多くは、歌の部分は実はわりとクールであり、間に挟まれるギター・ソロのパートで、その曲に込められた情念を一気に放出するのだ。
あのとんでもなく汚い爆音を出す”オールド・ブラック”、53年製ギブソン・レスポールを彼はもう半世紀以上も使い続けている。生涯の相棒のように。
あと、ニールの弾くマーチンのアコギがまた、ものすごく良い音がするのだ。ピックアップを付けてるようなので、その性能もあるのかもしれないが、初期のアコギのライヴなんか、弾き語りなのにえらい迫力で、ずっと聴いていられるほどだ。
(ピンク・フロイド)
David Gilmour (1946-)
わたしは昔からプログレが苦手でほとんど聴かないが、ピンク・フロイドだけはCDを集め、全作品を聴いた。それは、ギルモアがいるからだ。わたしにとってピンク・フロイドは彼を中心とした、キレまくりギター・ロックなのだ。
ギルモアの場合はやはりギター・ソロが聴き応えがある。有名な『狂気』の「タイム」や「マネー」ももちろんだし、『ザ・ウォール』の凄絶な「コンフォタプリー・ナム」や、『炎』の情感豊かな「クレイジー・ダイアモンド第1部」も最高だ。そしてアコギによる「あなたがここにいてほしい」も。沁みる。
(ドクター・フィールグッド)
Wilko Johnson (1947-2022)
パブ・ロックからの選出となったのは、ウィルコ・ジョンソンだ。ドクター・フィールグッドのオリジナル・メンバーで全曲を書いていた実質的な中心人物だったが、デビューからわずか2年で脱退してしまった。
ドクター・フィールグッドというバンドは実は今でも続いていて、すでにオリジナル・メンバーは一人もいないというモーニング娘。状態だが、わたしにとってドクター・フィールグッドと言えばやはりウィルコ・ジョンソンなのである。
とにかく1stアルバムの彼のくっそカッコいいプレイが衝撃的だったのだ。
ピックを使わずに指だけで弾く、あの異様にキレのいいギターを聴いた瞬間、わたしの体に電流が走った気がしたものだ。
(ニューヨーク・ドールズ~ザ・ハートブレイカーズ)
Johnny Thunders (1952-1991)
パンク代表はジョニー・サンダースだ。まあギター好きが選ぶ〇大ギタリストの、〇の数字がどれだけ大きくなっても永遠に入れてもらえそうもない彼だが、わたしは大好きだ。
彼のパフォーマンスにはヘロヘロでダメダメなものが多いのだけれども、ニューヨーク・ドールズ時代やハートブレイカーズ時代にはキャッチーなフレーズとカッコいいリフで、豪快かつクールな、これぞロケンロールというセンス溢れる名曲を何曲も書いた。
キース・リチャーズに憧れ、その本家よりもドラッグに溺れてしまい、なり損ねてしまったが、彼にはロック・ギタリストとしての天賦の才能が間違いなくあった。
(U2)
The Edge (1961-)
U2は間違いなくスーパー・ロック・スターなのだけれども、どこか職人的な印象が拭えないのはたぶんこのジ・エッジの風貌と、彼のあくなき探求で生み出される空間的なギター・サウンドを作り出していく様が、機械いじりの好きなエンジニアを思わせるからかもしれない。
ボノの声はもちろん魅力的だが、わたしにとってU2はやはりジ・エッジのギターのカッコ良さがなによりの魅力なのだ。
(ダイナソーJr.)
J. Mascis (1965-)
最後はオルタナ代表、J・マスシスだ。見た目は冴えないし、ヴォーカルはへろへろで、ギターは安かったという理由で購入しただけのフェンダー・ジャズマスターなのに、ハイテンションな殺伐轟音ギターが性急なビートに乗って、その名の通り恐竜が咆哮しながらのたうちまわるような様が衝撃的だった。わたしと同世代のギタリストの中では彼のプレイがいちばん好きだった。
まだ歌い終わらないうちに食い気味で始まるギター・ソロは、駆け上るように宙をギザギザに漂い、最後は着地点を見つけられずに放り投げられるように終わる、そんな独特のギター・ソロにわたしはいつも感動するのだ。
以上、わたしの10大ギタリストでした。
ヤードバーズの3人も入ってないし、なんだかやたら熱いわりにはたいして巧くないのばっかりで、ギター・マガジンなんかに怒られそうだけど、でもわたしが大好きなのだから、それでいいのだ。
(goro)