名盤100選 63 ジェームス・ブラウン『グレイテスト・ヒッツ』(1996)

グレイテスト・ヒッツ

このアルバムは96年に発売された「デビュー40周年アニヴァーサリーコレクション」という2枚組みのベストアルバムである。
たぶんリマスターという言葉につられて、わたしは発売されてすぐぐらいにこれを買った。古い音源なのに、躍動感のある生々しい音が気に入り、しばらくこればっかり聴いていた。

ソウルならともかく、ファンクというものは実は苦手なジャンルではある。
体育会系の飲み会でひと晩過ごすみたいな、最初はにぎやかしくて楽しいのだけど、あまりの中身の無さに飽きてしまうと、あとはもう話のできるやつとだけじっくり飲みたくなるのである。

でもこのアルバムは楽しめた。
デビューシングルの「プリーズ、プリーズ、プリーズ」から年代順にヒット曲が並ぶこのベスト盤は、まるでR&B~ソウル~ファンクとブラック・ミュージックの進化を聴くようでもあり、曲が変わるたびにハッとするような新しさや、革新的な空気を感じたりして、当時のセンセーションを追体験して感動したりする。

ジェイムズ・ブラウンと言えばもう究極のエンターテイナーのはずなのだが、こうしてCDで聴いていると、わたしにはなぜかエンタテインメントに聴こえない。まるで実験室か工房のようである。
ファンクというのはダンスミュージックではあるのだろうけど、聴く人を感動させようとか、なにかメッセージを送ろうとか、まるで考えていないように思えるところが、なんだかクラフトワークの音楽のように、シンプルかつストイックな音楽に聴こえてくるのだ。
わたしはそこが好きだ。