【ディランのアルバム全部聴いてみた】『テンペスト』(2012)

Tempest [12 inch Analog]

【ディランのアルバム全部聴いてみた 56枚目】
Bob Dylan “Tempest”

ディラン71歳のオリジナル・アルバム。ついに70代に突入だ。

1曲目がグレイトフル・デッドのロバート・ハンターとの共作である以外はすべてディランの作。全米3位、全英3位と、これまたよく売れた。

前作『トゥゲザー・スルー・ライフ』から3年ぶりとなるが、前作のシカゴ・ブルース的な方向性はこのアルバムの前半でも引き継いでいる。後半では長尺の物語が歌われるフォーク・バラッドが収録され、どちらかというと後半がメインのような感じだ。

94年の来日時のインタビューで、「声が変わっていくことと楽曲の変化は関係がありますか?」との質問にディランは「声に任せればいい。声のなすがままに」と答えているが、ブルースを歌うようになったのはきっとそういうことなのだろう。まるでハウリン・ウルフのようにダミ声で歌ってみたり、マディ・ウォーターズのように激しくどやしつけるように歌ったりと、71歳の貫録の塩辛声が曲によく合っている。いったんディランのことを忘れて声だけ聴いていると、いったいどれだけ辛酸をなめてきたジジイなんだろうと思うほど、人生の苦闘が刻まれた傷だらけの声にも聴こえてくる。

アルバムのハイライトは、14分に及ぶタイトル曲「テンペスト」で、ワルツのリズムとアコーディオンのノスタルジックな響きに合わせて、タイタニック号が沈んでいくところが、様々な乗客や乗務員のそれぞれの立場から歌われていく。これは一度は訳詞を読みながら聴いたほうが面白いかもしれない。絶望的な状況に対してやけに軽快なリズムがミスマッチで面白い。ちょっとビリー・ジョエルの「ピアノ・マン」を思い出したな。

↓ シングル・カットされた「デューケイン・ホイッスル」のPV。

↓ 沈みゆくタイタニック号を歌った14分のフォーク・バラッド「テンペスト」。

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